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一章 349京2413兆4400億年の苦行
4話 落ちた
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落ち始めてから途方もない時が経った。
その間、一滴の水さえ口にしていない。身体は干からびて痩せ細り、骨に皮が張り付いているだけという状態だ。
そして今、その身体は炎に包まれ、燃え上がりながら落下している。
カラカラに干からびた身体は真っ黒な煙を上げてよく燃え、それでいていつまで経っても燃え尽きることはない。
肺が焼け焦げ、焦げ臭い肉の臭いが黒煙と共に口や鼻を通り抜けていく。
普通なら全身の機能は停止しているはずだが、意識があり、目が見え、耳も聞こえる。
岩肌にぶつかり続けてバラバラになった身体はいつの間にか元通りになっていた。
崖を転がり落ちていた頃がどんなに幸せだったか、と思うほどに強烈な刺激が全身を絶え間なく責め続け、落ちれば落ちるほどそれは強くなっていった。
落ちる先は太陽とも思える黄金の炎が一面に広がり、視界を埋め尽くす。
落下し始めてから2,000年が経った時だった。
俺の身体は、果てしなく広がる灼熱の大地に叩きつけられた。
ようやく地獄に辿り着いたのだ。
落下した衝撃により身体が四散五裂すると、散らばった各部位からパキパキと乾いた薪が焼けるような音を立てて燃え上がった。
散らばった身体の破片のそれぞれから、高熱で焼かれる痛みを感じる。
身体から引き離された頭部は、行き先を探すように焼けた大地の上をごろごろと転がった。
見えるものは隙間なく埋まる黄金の火柱と、真っ赤に熱された大地だけだ。数メートル先の景色さえ確認することは出来ない。
巻き上がる炎は暴風を生み、肉の焦げた臭いと共に黒煙が渦巻く。
転がる俺の頭部はやがて動きを止め、直立した。
炎の先にうっすらと見える影。それは人のような形をした黒い塊で、焼けた地面の上をのたうち回っている。
当然、他にもここに落とされた者がいるのだ。
焼けた大地に視線を落としてよく見ると、真っ赤に焼けた岩の一つ一つがひとりでにうようよと不規則に動いていた。
大地だと思っていたそれは、陸ガメほどの大きさの炎を纏った虫の大群だった。
その虫には無数の口ばしがあり、そこから炎が零れ出ている。
虫に頬の肉や耳、鼻を食いちぎられて焼かれながら、方々に散らばった身体も同様に他の虫に食われ、飲み込まれていくのを見た。
虫の口の中でグチャグチャに潰された肉のひと粒ひと粒から痛みが飛んでくる。
虫は丸焼けになった俺の頭部にもかじりつき、バリバリ、ガリガリと美味そうな音を立てて頭蓋骨を噛み砕いた。
鋭利な歯によって跡形もなく散り散りに引き裂かれた頭部は虫の腹に納まった。
ミンチにされた肉片は虫の腹の中、強い酸性の胃袋で溶かされて肛門から排泄される。
排泄された身体は何故か元通りに再生されている。が、間を置くことなく灼熱の炎によって焼かれてしまう。
炎に巻かれ悶える中、耳の奥に突き刺さるような金属音を立てて何かが迫ってきた。
それは鍛えた刀剣の様に輝く身体を持つ、巨大な大蛇だった。
大蛇は牙を剥き出し、俺を睨みつけた。
地獄に落ちてから数分間の出来事だった。
その間、一滴の水さえ口にしていない。身体は干からびて痩せ細り、骨に皮が張り付いているだけという状態だ。
そして今、その身体は炎に包まれ、燃え上がりながら落下している。
カラカラに干からびた身体は真っ黒な煙を上げてよく燃え、それでいていつまで経っても燃え尽きることはない。
肺が焼け焦げ、焦げ臭い肉の臭いが黒煙と共に口や鼻を通り抜けていく。
普通なら全身の機能は停止しているはずだが、意識があり、目が見え、耳も聞こえる。
岩肌にぶつかり続けてバラバラになった身体はいつの間にか元通りになっていた。
崖を転がり落ちていた頃がどんなに幸せだったか、と思うほどに強烈な刺激が全身を絶え間なく責め続け、落ちれば落ちるほどそれは強くなっていった。
落ちる先は太陽とも思える黄金の炎が一面に広がり、視界を埋め尽くす。
落下し始めてから2,000年が経った時だった。
俺の身体は、果てしなく広がる灼熱の大地に叩きつけられた。
ようやく地獄に辿り着いたのだ。
落下した衝撃により身体が四散五裂すると、散らばった各部位からパキパキと乾いた薪が焼けるような音を立てて燃え上がった。
散らばった身体の破片のそれぞれから、高熱で焼かれる痛みを感じる。
身体から引き離された頭部は、行き先を探すように焼けた大地の上をごろごろと転がった。
見えるものは隙間なく埋まる黄金の火柱と、真っ赤に熱された大地だけだ。数メートル先の景色さえ確認することは出来ない。
巻き上がる炎は暴風を生み、肉の焦げた臭いと共に黒煙が渦巻く。
転がる俺の頭部はやがて動きを止め、直立した。
炎の先にうっすらと見える影。それは人のような形をした黒い塊で、焼けた地面の上をのたうち回っている。
当然、他にもここに落とされた者がいるのだ。
焼けた大地に視線を落としてよく見ると、真っ赤に焼けた岩の一つ一つがひとりでにうようよと不規則に動いていた。
大地だと思っていたそれは、陸ガメほどの大きさの炎を纏った虫の大群だった。
その虫には無数の口ばしがあり、そこから炎が零れ出ている。
虫に頬の肉や耳、鼻を食いちぎられて焼かれながら、方々に散らばった身体も同様に他の虫に食われ、飲み込まれていくのを見た。
虫の口の中でグチャグチャに潰された肉のひと粒ひと粒から痛みが飛んでくる。
虫は丸焼けになった俺の頭部にもかじりつき、バリバリ、ガリガリと美味そうな音を立てて頭蓋骨を噛み砕いた。
鋭利な歯によって跡形もなく散り散りに引き裂かれた頭部は虫の腹に納まった。
ミンチにされた肉片は虫の腹の中、強い酸性の胃袋で溶かされて肛門から排泄される。
排泄された身体は何故か元通りに再生されている。が、間を置くことなく灼熱の炎によって焼かれてしまう。
炎に巻かれ悶える中、耳の奥に突き刺さるような金属音を立てて何かが迫ってきた。
それは鍛えた刀剣の様に輝く身体を持つ、巨大な大蛇だった。
大蛇は牙を剥き出し、俺を睨みつけた。
地獄に落ちてから数分間の出来事だった。
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