Retry 異世界生活記

ダース

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第2章.少年期

41.ピンハネの代償

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なんだ有事の際って…
戦争でも始めるつもりか…?

しかし、ポーション回復薬を買えるだけ買って来いと言っていた。

…とても危険な予感がする。
あのニヤつき…。

とりあえず、父には友達の兄の冒険者から頼まれたと言って店からポーションを買った。

買えるだけ、と言っていたので、もう今さらごまかしてもまずいと思い、
1つ10000ガルのポーションを5本買った。
合計5万ガルだ。

これで俺の財産はほぼなくなってしまった…。
ぐぅ…。

あと、今日はなんだか危険な予感がするので、店からあの売れていないショートソードを持ちだし、
あの場所ろじうらに向かうことにした。


「こ…これ…。」
おそらく許してくれそうもないが、今日はシュクルムを4つ渡す。

「ほう?これが本来のわたしの取り分ということだな…?」

ぐっ…。
しかし、全くその通りなので反論できない。

「う…うん。ごめん。」
一応謝ってみる。


「くっくっく。怒ってはおらぬと言ったであろう。」
不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている。

「ほれ。今まで修行を頑張った褒美だ。1つやろう。」
そう言って、シュクルムを1つ俺に手渡した。

…なんだ。
なにをしようとしている…。
俺を喰うつもりか?

「なにをビクビクしておるのだ。今日はおまえの初陣ういじんだ。修業の成果をそろそろ試したいであろうと思ってな。」


へ?初陣ういじん…?
やっぱり戦争か?
と思っていると、

シュクルムを食べ終えたコルトが
「ついて来い。」
そう言って歩き始めた。


ここは人気ひとけのない路地裏。
本当に人気が無い。
コルトと修行を始めてから1人も見かけたことがない。
…奥で俺を喰うつもりじゃないよな…
と少し不安になりつつ、着いていく。

すると、ある建物の前でコルトが立ち止りドアを開けた。

「ええ?おい。勝手に入ると…っ」
ビックリしてそう声をかけるが、コルトは構わず建物の中に入って行くので、
しかたなく着いていく。

中に入ると、薄暗く、ほこりだらけだった。

「…ここはなんだ?」
そうコルトに問いかけると、

「ん?まぁ気にするな。こっちだ。」
そう言って再び歩き始めた。

そして1つのドアの前で立ち止まり、そのドアを開けた。
コルトはドアを開けた先に進むので俺も着いていく。


すると、ドアを開けた先には森が広がっていた。

「ここは…?」
俺がそう言うと、

「ここはおまえの住む街の外だ。門から入ると身分証だの金だの要求されるのでな。」

どうやら、警備の甘い街の裏口からコルトは出入りしているようだった。
なるほど。
たしかに門から通行すると、街に入るときに身分証の提示が必要だ。
身分証が無い場合はたしかお金を払わないといけないはず。

コルトはどちらも持ってないからいつもここから街に出入りしていたのか。

しかし、森でなにをするんだ?
今日はなにをするのかまったくわからず、不安なので聞いてみる。
「な…なぁ、コルト。街の外に出てどうするんだ…?」

ちなみに俺は街の外に出たことがまだない。
なので、今まさにこの瞬間が街からの初外出だ。

「まぁ、着けばわかる。」
コルトがそう言うと再び歩き始めた。

む~。
しかし、今は着いていくしかないのでコルトの背中を追う。

…。

森の中に入り、20分ほど歩いただろうか。

もう、来た道もよくわからないぞ…。
帰りもちゃんと案内してくれるよな…。

そんな不安な想いを抱いていると、コルトが立ち止り、こちらを向いた。
「よし。この辺りなら大丈夫か。」
そう言うと、

ボフンッ!

「おわっ!」
急に煙のようなもやのようなものと共にそんな音がしてビックリした俺は声を上げた。

煙が晴れると、目の前になぜか、少し輝く茶色、というか金色の壁が現れた。

…な…なんだ…?
と見回すと、上の方に狐の顔が見えた。

そう。目の前ものは壁ではなく、でかい狐だったのだ。

「ええ!?えっ!どど…。コ…コルト…っ!」
慌ててコルトを呼ぶ。

「なんだ。おまえはわたしの正体を知っているであろう。驚くでない。」

そのでかい狐からあの少し低い女性の声が聞こえた。

「…え?もしかして…コルト…?」
このでかい狐がコルトなの?
人間から狐に姿を変えたということか…?

「そうだ。これが本来の姿だ。高貴であろう?」
コルトが顔を近づけてくる。
…めっちゃこわい…。
しかし改めて、あぁ、ここは異世界なんだなぁ。と思った。


「…で、どうするんだ…?」
うむ。で、肝心なところ、どうするのだ?
く…喰われないよね?

するとコルトは体をかがませ、
「背中に乗れ。この森のもう少し先が目的の場所だ。」
そう言った。

そう言われた俺は、コルトを脇からよじ登り背中に到達すると、その毛にしがみついた。
コルトの毛はとてもつやつやサラサラで少し輝きを放っているような綺麗な毛だ。
すこし撫でて堪能しておこう…。

…ん?俺が毛を掴んでいる場所より少し上…
傷があるな…。1メートルほど。結構大きい。傷のせいでそこだけ毛もうまく生えていないようだ。
う~む。もったいない…。

そんなことを思っていると、コルトは立ちあがり、走り出した。

「おおぅっ!…はやっ!ぐぐっ!」
思いのほか早い。
振り落とされたらどこかへ吹き飛んで行ってしまうので、必死にコルトの毛に掴まる。


またしても20分ほど経っただろうか。
コルトが立ち止った。

「この辺りだ。降りてよいぞ。」
そう言うので降りる。

辺りを見回してみるが、ただの森だ。


ボフンッ!

再び音がして振り返ると、
そこにはいつもの金髪スレンダーな女性が立っていた。


「クルス。今までわたしが教えたこと。覚えているな?」
コルトがそう問いかける。

「うん。結構出来てきたと思うけど…。」
うむ。毎日やっているし、順調にスキルLvは上がっているぞ!
と思い答える。


「くっくっく。ならば、実践だ。実際に使ってみなければ効果もわからぬであろう。」

いったい何をする気だ、と不安になっていると、
ザーッと風が通り過ぎ、木々を揺らした。


ザッ…ザッ…ザッ…
木々の揺れる音かと思ったが、風が止んでも、音が聞こえる。


ザスッ…ザスッ…ザスッ…


…だんだんと音が近づいてくる。

ドスッ…ドスッ…ドスッ…


なんだか、少し重量感のある音になって近づいてくる。
なんだ…なんなんだ…。
冷や汗が首筋を通る。


「お…おいっ!コルト!いったい何が…っ!」

そう言った瞬間、木の陰から、その音の正体が現れた。

ミシッ…
木の幹に掛けた手の場所から音が鳴る。

身長は2.5メートルほどあるだろうか。
体は灰色で筋骨隆々だ。
鋭い眼光でこちらを見ている。

…そして額からは2本の立派な角が生えていた。


「ほれ。来たぞ。わたしは後ろで休んでいるからな。倒したら声を掛けに来い。」


「え…っ!うそ…っちょっとまっ…っ!」
コルトのその声に振り返るが、もうコルトの姿はなかった。




「鑑定」


鑑定結果
・種族:オーガ
・性別:雄
・名前:---
・年齢:26





「……うそだろ…」




ドスッ…

オーガが1歩、こちらへと歩みを進めた。


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ステータス
・種族:人族
・性別:男
・名前:クルス・ラディクール
・年齢:6 → 7 (1UP)
・Lv:1
・HP: 58/58 → 69/69 (11UP)
・MP:65/65 → 88/88 (23UP)
・攻撃力:28 → 33 (5UP)
・魔力:61 → 77 (16UP)
・物理防御力:30 → 34 (4UP)
・魔法防御力:31 → 39 (8UP)
・敏捷:30 → 34 (4UP)

スキル
・魔力操作Lv10 → 17 (7UP)
・身体強化Lv5 → 7 (2UP)
   
固有スキル
・鑑定Lv2

魔法適性
・火、水、風、光

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装備品
・ショートソード(鉄製)

持ち物
・ポーション x 5本
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