Retry 異世界生活記

ダース

文字の大きさ
40 / 78
第2章.少年期

40.突然の来店

しおりを挟む
週の初め。
今日も学校から帰ると、父の雑貨屋を手伝う。

蜂蜜の入った瓶を並べながらふと思う。

そう言えば、コルトと出会ってもう少しで1年程になるだろうか。
あいつに言われた修行内容を毎日やっているせいか、
魔力の感覚というものが日々わかるようになってきている。
そして身体強化と魔力操作のLvが着々と上がっている。

地味な修行のわりに効果がある。
あいつコルト、学校のクラスにいたら結構真面目なタイプかもな…。
そんなことを思っていると、聞き覚えのある声がした。


少し低い女性の声だ。

「ほう。ここがクルスの家か。」
金髪のナイスでスレンダーな女性が目の前にいた。


「コ…コルトっ!なんでここに…っ!」
思わず驚いてしまい声をかける。

「いや、なに。おまえの雑貨屋というのが見たくてな。それにわたしの狩ったタンクビーの蜂蜜がどうなったのかも見たかったからな。」


「いらっしゃい。おや?もしかして、キミがクルスの友達のお姉さんかな?いや~この蜂蜜は人気でな~。すぐに売り切れてしまうよ。」
父が話しに割り込んできた。

…いやな予感がする…。


「そうですか。ありがとうございます。わたしはコルトといいます。蜂蜜をどのように売っていいものかわからず、クルスくんには助けられております。」

おおぅ。なんだその言葉使い。
どこで身につけた…。

そう思って聞いていると、

「いやぁ、蜂蜜は高級ですから。こんな美人のお嬢さんから納めて貰っているとは驚きましたよ。」
そう父が続けて話す。


「…高級なのですか。…ひとつ売れるとどれくらいお金になるのですか?」
コルトの目が少し鋭くなりつつ、そう言葉を続ける。


あっ…。
その話題は…
…やばい。
やばいやばいやばい。


「なんだ。クルス。伝えていなかったのか?ダメだぞ?」
父がそう言う。


言うな…。
父よ言うでなーい!!!


「蜂蜜は800ガルで売っているが、瓶の仕入れ値が300ガルするからな。1つ売れると利益は500ガルだ。甘味は人気があるからすぐに売り切れになるがな!」
父は笑いながらコルトにそう説明した。


俺の願いもむなしく、父は正直にコルトに伝えてしまった。

……。


「…ほう。ありがとう主人。よくわかりました。」
コルトはにやりと笑いそう言った。

「そうか。まぁ、せっかく来たならいろいろ見て行ってくれ!」
父はコルトにそう言い、店の奥に帰って行った。




…やばい…
…やばいやばい…

少しの沈黙の後、
悪寒共に、コルトは俺に近づいてきた。


そして、

「なぁ、クルスよ。少し聞きたいことがある。」
…コルトは顔を近づけ、そう問いかけた。


「…はい…なんでしょうか…」
緊張した空気感が漂う中、俺は目線を合わせることができず、まっすぐ前を見たまま口を開く。


「あそこに並んでいる瓶が蜂蜜か?」

「…はい。そうです…。」


「4つ並んでいるな…。」

「…そう…みたいですね…」

…俺の額を汗が流れ落ちる。


「1つ売れると500ガル儲かるそうだな。」

「…そう…ですね…」


「4つ売れたら、500ガルが4つだな…」

「…はい。」


「1つ500ガルのシュクルムが4つ買えるのではないか…?」

「…そういう…ことに、なりますかね…。」

やっぱり気づいてしまった。
わかってたけど!
この尋問始まるときにわかってたけど!


「…ほぅ?おまえがいつもわたしに持ってくるシュクルムは2つだな。」

「はい…。」


「シュクルム残り2つ分はどうしたのだ…?」

…どうしよう…
…どうしようどうしようどうしよう!
なんだ。なんか…なんか…っ!


「のぅ、クルスよ…。別に怒ってはおらん。正直に言えばよい…。」

それは絶対怒ってるときに言うセリフー!
と思いつつ、異常な殺気の中、なにかないかと考えを巡らせる。


「…あ、あのですね…、何か有事ゆうじさいなどあるかと思いましてですね…。取って置いたのですよ。…あ、あははは…」

…く、苦しい。
しかし、売上の余剰分はとりあえずまだ使ってはいないのだ。
うむ。取っておいたということにして、なんとか納めてもらいたい…。


「ほう?有事の際のために取って置いた…とな。
…ん?これは…。」
お?もしかしておさまった?
なにか少しだけ殺気が和らぐとともに、コルトはハッとなにかを見つけたような表情をしている。


「クルス。そこに置いてあるのは回復薬というものであろう?」
コルトがポーションを指さし、そう言う。

「あ、うん。そうだけど…」
…なんだ急に?回復薬がほしいのかな。



「クルス。明日、この回復薬を買えるだけ買って、あの場所ろじうらに来い。」

「へ?なんで?」
急になんに使うんだ?と不思議になり、聞いた。


するとコルトは俺の頭をグッと掴み耳元で言った。



「くっくっく!…明日がその有事の際、というやつだ…。」



なにか背筋がぞっとした。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...