42 / 78
第2章.少年期
42.はじめての戦い
しおりを挟む
どーするどーするどーする…っ!
いきなりオーガと戦うのとかそんなの無理だろ…。
倒したら声を掛けに来いとか…。
うぅ…。
まさか、シュクルムの売り上げをほんの少しくすねていたせいでこんなことになるとは…。
「コ…コルト…っ!むり!…むりだってば!」
思わず声を上げる。
「ッ!グオオオォォォオッ!」
しかし、その声に反応したのはコルトではなく、目の前のオーガだった。
その声と威圧感に恐怖が湧き上がる。
オーガの敵意がひしひしと伝わってくる。
とりあえず、俺は腰にさしたショートソードを構えた。
オーガが鋭い眼光で俺を見据えたまま、少しかがんだ。
そして
ドッ!
オーガが地面を蹴り上げる音が聞こえ、
こちらに向かって走り出した。
はやっ!
2.5mという巨体との距離が一気に縮まる。
これじゃあ逃げたところですぐに追いつかれる…
戦うしかないのかっ…!
って負けたらこれってもしかしなくても死ぬよね…。
前世で殺されてしまった記憶があるせいかもう死ぬのは二度とごめんだ。
そういえば前世の父と母は元気だろうか…。
ってそんなことを考えていてもしょうがない。
この世界で大切に育ててくれた両親のためにも生き残らねばっ!
そう、心を決めた俺は向かってくるオーガに目を見据えた。
オーガは走りながら右腕を振り上げた。
ブオォォンッ!と目の前をオーガの拳が通りすぎる。
こんなの喰らったらひとたまりもないな…。
そう感じた瞬間、自分の体から冷や汗なのか、じんわりと汗が出てくるのがわかった。
動きのスピードは俺より早いが、モーションが大きかったので初撃はなんとか避けられた。
しかし、そもそもオーガってどんな攻撃してくるんだ?
前世でのファンタジーの中では筋骨隆々の姿で格闘タイプだった。
魔法とかは使ってないイメージだったけど、こいつもそうなのか?
さっきの攻撃。
まともに喰らうわけにはいかない。
考えろ…っ!
よく相手を見ろっ!
今までやったことを思い出せ!
そう自分に言い聞かせる。
ブオォォンッ!
再び俺の目の前をオーガの拳が通りすぎた。
俺は敵が振り上げた腕が動き出す瞬間、その腕の射程から外れるよう斜め後方にステップし、その拳を避ける。
ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!ブオォォンッ!
「…グゥゥゥ…ヴウゥゥゥヴヴッ!」
オーガは攻撃が当たらないのが気に食わないのか、なんだか怒り出している気がする…。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
単調な攻撃なのでなんとか避けられているが、
避けてばかりではらちが明かないし、じり貧だ。
なんとか攻撃しなくては。
少し息が上がってきたことに気付いた俺はそう考えた。
生まれてきてからずっと練習してきた魔法だが、
MPが切れると気絶してしまう。この場面で気絶してしまうといっかんの終わりだ。
MP消費の多い大技は厳禁だ。
そう考えると、今の俺の攻撃手段はこの手に持っているショートソードだ。
コルトとの修行で身に付いた身体強化スキルもあるしこれで何とかするしかない。
そう思い攻撃する隙を探す。
前世の学生時代、剣道をやっていた俺は先生が言っていたことを思い出した。
相手に攻撃を当てるには相手の隙をつかなければならない。
隙が生まれる瞬間は
・相手が攻撃する瞬間
・技が打ち終わった後
・防御の瞬間
後は力技で
・相手が反応するより早く攻撃する
・連撃により相手の防御を崩す
とかそんなことを言っていた気がする。
とりあえず、オーガはモーションが大きいので、攻撃が終わった後にショートソードによる一撃をお見舞いしてやることにした。
「グゥゥヴヴヴヴア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
再びオーガが腕を振り上げ攻撃してきた。
よし!来い!
そう思い、やつの拳が俺の目の前を通り過ぎる瞬間を狙う。
今までと同じように、オーガの腕の射程から外れるようバックステップする。
ザクッ!
オーガの手が通りすぎた瞬間何か顔に触れた気がした。
しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。
今だ!
そう思い、俺は手に持ったショートソードで、
腕を振り下ろしがら空きとなったオーガの右わき腹に向けて、一閃っ!
ガキィィィィンッ!
オーガの右わき腹を切り裂いて後ろに抜けると思った剣が予想に反してはじき返された。
「うぉぉ!」
その衝撃に体勢を崩していると、オーガが再び腕を振り上げたので、俺は転がるようにしてオーガとの距離を取った。
え?はじき返された?
剣で切れないの?
え?どうしよ…どうしよ…っ!
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
剣がはじき返されたことへの動揺もあって、息が上がる。
すると、
ポタッ…ポタッ…ポタッ…
と敵に向けて構えている剣を持つ右手に何かが滴り落ちる。
なんだ…?
と思い、滴ったその液体を触り、目の前に液体に触った左手を持ってくると、その掌は赤く染まっていた。
「っ!」
血だ…。
もしかして俺の剣ははじかれたと思っていたが、オーガに傷を付けることができていたのか?
と思い、敵の脇腹を見るが、傷は付いていないようだ。
ということは、これは…
俺の血だ…。
…どこをやられた…?
そういえばさっき、オーガの攻撃を避ける時、顔に何かが触れた気がした。
そう思い、顔を触ると、
「いっ…!」
頬がざっくりと切れていた。
それがわかると、だんだんと痛みが増してきた。
やばい…この状況を打破する方法が見つからない…。
そんな思いに焦りながらも、次の攻撃に備えるため再びオーガを見据える。
すると、オーガの右手の爪に赤い液体が付いていた。
そうか。
さっきの攻撃は拳ではなく、爪で切るように攻撃したのか!
手を広げ、爪が出た分、今までの攻撃より射程が長くなり、オーガの爪が俺の頬を切り裂いたのだった。
傷が付いていることが分かると、なぜか痛みが出てくるのはなんでなんだろう。
前世の剣道の試合中でも、試合中は何でもないのに、試合後に怪我に気付くと急に痛み出すことがあった。
そういえば、ポーションがあったな。
コルトに言われ、俺の全財産を空にして手に入れたポーション x 5本。
痛みで集中力を欠いたり、血で剣が滑っても嫌なので1本使ってみることにした。
あれ…?
…そもそもどうやって使うんだろう。
店でお客さんに売ったことはあれど、使ったことはなかったのでポーションの使い方を知らなかったのだ。
簡単な怪我は、回復魔法が使える母が治してくれたし…。
しかし、この状況。
あれこれ考えても仕方が無いのでとりあえず傷口に掛けてみることにした。
ポーションを取りだし、蓋を外すと自分の頬に掛けた。
すると、頬になんだか少し暖かさを感じるとともに、淡く光った。
淡い光が消えたと思ったら頬の痛みが引いたので
治ったのか…?
と思い、手で頬を触ってみると、先ほどまであった傷がきれいさっぱり無くなっていた。
「おおぅ…!すご…っ!」
思わず声が出る。
これは医者いらずだな…。
しかし、そもそもこのポーションってどれくらい効き目があるんだ?
骨折したりとか手足がちぎれたものにも効いたりするんだろうか…。
…それは期待しない方がよさそうだな…。
そう思い、ポーション頼みの特攻攻撃はやめておくことにした。
---------------------------------------------------------------------------------
装備品
・ショートソード(鉄製)
持ち物
・ポーション x 5本 → 4本
いきなりオーガと戦うのとかそんなの無理だろ…。
倒したら声を掛けに来いとか…。
うぅ…。
まさか、シュクルムの売り上げをほんの少しくすねていたせいでこんなことになるとは…。
「コ…コルト…っ!むり!…むりだってば!」
思わず声を上げる。
「ッ!グオオオォォォオッ!」
しかし、その声に反応したのはコルトではなく、目の前のオーガだった。
その声と威圧感に恐怖が湧き上がる。
オーガの敵意がひしひしと伝わってくる。
とりあえず、俺は腰にさしたショートソードを構えた。
オーガが鋭い眼光で俺を見据えたまま、少しかがんだ。
そして
ドッ!
オーガが地面を蹴り上げる音が聞こえ、
こちらに向かって走り出した。
はやっ!
2.5mという巨体との距離が一気に縮まる。
これじゃあ逃げたところですぐに追いつかれる…
戦うしかないのかっ…!
って負けたらこれってもしかしなくても死ぬよね…。
前世で殺されてしまった記憶があるせいかもう死ぬのは二度とごめんだ。
そういえば前世の父と母は元気だろうか…。
ってそんなことを考えていてもしょうがない。
この世界で大切に育ててくれた両親のためにも生き残らねばっ!
そう、心を決めた俺は向かってくるオーガに目を見据えた。
オーガは走りながら右腕を振り上げた。
ブオォォンッ!と目の前をオーガの拳が通りすぎる。
こんなの喰らったらひとたまりもないな…。
そう感じた瞬間、自分の体から冷や汗なのか、じんわりと汗が出てくるのがわかった。
動きのスピードは俺より早いが、モーションが大きかったので初撃はなんとか避けられた。
しかし、そもそもオーガってどんな攻撃してくるんだ?
前世でのファンタジーの中では筋骨隆々の姿で格闘タイプだった。
魔法とかは使ってないイメージだったけど、こいつもそうなのか?
さっきの攻撃。
まともに喰らうわけにはいかない。
考えろ…っ!
よく相手を見ろっ!
今までやったことを思い出せ!
そう自分に言い聞かせる。
ブオォォンッ!
再び俺の目の前をオーガの拳が通りすぎた。
俺は敵が振り上げた腕が動き出す瞬間、その腕の射程から外れるよう斜め後方にステップし、その拳を避ける。
ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!
ブオォォンッ!ブオォォンッ!ブオォォンッ!
「…グゥゥゥ…ヴウゥゥゥヴヴッ!」
オーガは攻撃が当たらないのが気に食わないのか、なんだか怒り出している気がする…。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
単調な攻撃なのでなんとか避けられているが、
避けてばかりではらちが明かないし、じり貧だ。
なんとか攻撃しなくては。
少し息が上がってきたことに気付いた俺はそう考えた。
生まれてきてからずっと練習してきた魔法だが、
MPが切れると気絶してしまう。この場面で気絶してしまうといっかんの終わりだ。
MP消費の多い大技は厳禁だ。
そう考えると、今の俺の攻撃手段はこの手に持っているショートソードだ。
コルトとの修行で身に付いた身体強化スキルもあるしこれで何とかするしかない。
そう思い攻撃する隙を探す。
前世の学生時代、剣道をやっていた俺は先生が言っていたことを思い出した。
相手に攻撃を当てるには相手の隙をつかなければならない。
隙が生まれる瞬間は
・相手が攻撃する瞬間
・技が打ち終わった後
・防御の瞬間
後は力技で
・相手が反応するより早く攻撃する
・連撃により相手の防御を崩す
とかそんなことを言っていた気がする。
とりあえず、オーガはモーションが大きいので、攻撃が終わった後にショートソードによる一撃をお見舞いしてやることにした。
「グゥゥヴヴヴヴア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
再びオーガが腕を振り上げ攻撃してきた。
よし!来い!
そう思い、やつの拳が俺の目の前を通り過ぎる瞬間を狙う。
今までと同じように、オーガの腕の射程から外れるようバックステップする。
ザクッ!
オーガの手が通りすぎた瞬間何か顔に触れた気がした。
しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。
今だ!
そう思い、俺は手に持ったショートソードで、
腕を振り下ろしがら空きとなったオーガの右わき腹に向けて、一閃っ!
ガキィィィィンッ!
オーガの右わき腹を切り裂いて後ろに抜けると思った剣が予想に反してはじき返された。
「うぉぉ!」
その衝撃に体勢を崩していると、オーガが再び腕を振り上げたので、俺は転がるようにしてオーガとの距離を取った。
え?はじき返された?
剣で切れないの?
え?どうしよ…どうしよ…っ!
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
剣がはじき返されたことへの動揺もあって、息が上がる。
すると、
ポタッ…ポタッ…ポタッ…
と敵に向けて構えている剣を持つ右手に何かが滴り落ちる。
なんだ…?
と思い、滴ったその液体を触り、目の前に液体に触った左手を持ってくると、その掌は赤く染まっていた。
「っ!」
血だ…。
もしかして俺の剣ははじかれたと思っていたが、オーガに傷を付けることができていたのか?
と思い、敵の脇腹を見るが、傷は付いていないようだ。
ということは、これは…
俺の血だ…。
…どこをやられた…?
そういえばさっき、オーガの攻撃を避ける時、顔に何かが触れた気がした。
そう思い、顔を触ると、
「いっ…!」
頬がざっくりと切れていた。
それがわかると、だんだんと痛みが増してきた。
やばい…この状況を打破する方法が見つからない…。
そんな思いに焦りながらも、次の攻撃に備えるため再びオーガを見据える。
すると、オーガの右手の爪に赤い液体が付いていた。
そうか。
さっきの攻撃は拳ではなく、爪で切るように攻撃したのか!
手を広げ、爪が出た分、今までの攻撃より射程が長くなり、オーガの爪が俺の頬を切り裂いたのだった。
傷が付いていることが分かると、なぜか痛みが出てくるのはなんでなんだろう。
前世の剣道の試合中でも、試合中は何でもないのに、試合後に怪我に気付くと急に痛み出すことがあった。
そういえば、ポーションがあったな。
コルトに言われ、俺の全財産を空にして手に入れたポーション x 5本。
痛みで集中力を欠いたり、血で剣が滑っても嫌なので1本使ってみることにした。
あれ…?
…そもそもどうやって使うんだろう。
店でお客さんに売ったことはあれど、使ったことはなかったのでポーションの使い方を知らなかったのだ。
簡単な怪我は、回復魔法が使える母が治してくれたし…。
しかし、この状況。
あれこれ考えても仕方が無いのでとりあえず傷口に掛けてみることにした。
ポーションを取りだし、蓋を外すと自分の頬に掛けた。
すると、頬になんだか少し暖かさを感じるとともに、淡く光った。
淡い光が消えたと思ったら頬の痛みが引いたので
治ったのか…?
と思い、手で頬を触ってみると、先ほどまであった傷がきれいさっぱり無くなっていた。
「おおぅ…!すご…っ!」
思わず声が出る。
これは医者いらずだな…。
しかし、そもそもこのポーションってどれくらい効き目があるんだ?
骨折したりとか手足がちぎれたものにも効いたりするんだろうか…。
…それは期待しない方がよさそうだな…。
そう思い、ポーション頼みの特攻攻撃はやめておくことにした。
---------------------------------------------------------------------------------
装備品
・ショートソード(鉄製)
持ち物
・ポーション x 5本 → 4本
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,006
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる