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第1章 異世界転移と旅立ち

第6話 時空魔法とアイテムボックス

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 アリスと並んで座り休憩しながらもアリスは話し始める。

 (次に【時空魔法】ですが【時間魔法】と【空間魔法】を合わせたものです。ヤストなら時間や空間の概念は理解できますよね?)  
 
 「時間はもちろん分かるよ。空間は『広がり』だったかな?説明が難しいが箱の中身の空間や、今いる空間は理解できる。」

 (はい。その概念で大体あっています。私もあまり難しいことは理解出来ませんが、火の温度を知らなくても火の魔法を使えるように、大体のイメージでも魔法は使用可能です。)

 「良かった。それで【時空魔法】はどのように使えばいいんだ?」

 (分かりやすいのはアイテムボックスと転移です。攻撃や防御に使うにはあまり思いつかないのですがヤストが好きそうな空間を分ける『次元刀』とかですかね。)

 「次元刀!!!!!」
 
 例の病気がうずくが、ここはじっと我慢した・・・

 (・・・・ヤスト、まずはアイテムボックスを作成しましょう。)

 スルーされながら、アリスに説明を続けられる・・・

 (普通の作成方法は【空間魔法】で魔石を縫い付けた袋か、ミスリル等の魔法金属で出来たアクセサリーに魔法を付与しアイテムボックスを作ります。内容量は作る人が込める魔力に応じて決まります。しかしヤストは【時間魔法】を持っているのでそこから更に『時間』の概念を加えれば、アイテムボックスに時間停止・加速・減速の効果も付与出来ると思われます。) 

 「チートのアイテムボックスだな。」

 (そうですね。【空間魔法】の使い手は少ないためアイテムボックス自体を作成できる人は小数ですが、 普通のアイテムボックスは、ダンジョンのドロップでも出ることがあるそうなので、ものすごく珍しいわけではありません。しかし時間停止等の効果があるアイテムボックスはほとんど無いようなので注意してください。)

 「分かった。時間停止には気をつけるよ。」

 注意するべき点は注意していかないと、危険に巻き込まれたり目立ちすぎたりするので、アリスの忠告は大変ありがたい。

 (お願いします。 実はヤストの腕時計はこの世界には無い金属です。しかし魔法を付与出来る金属であると思いましたので一度試してみましょう。)

 この腕時計は自分へのご褒美として数年前に買った高級腕時計、完全防水・太陽充電機能が付いており、時間のずれも1年で2秒も無いと言う、一生物と言われている時計だ。 確か材質はチタンだったはず。

 「ずっと身に着けている腕時計がアイテムボックスになれば便利だが、どうすればいいんだ?」

 (まずは四角い箱を想像し、その中に物が収納出来るように想像して下さい。)

 「倉庫の中身みたいな感じだな。」

 (次に入り口を1つ作り、入り口を腕時計にイメージするのです。)

 「まあ、ライトノベル等でアイテムボックスは想像出来るから大丈夫だと思う。やってみていいか?」

 (はい魔力を込めて作成してみて下さい。作成が出来れば後から大きさを変えたりは出来ますので限界まで魔力を込める必要はありませんからね。)

 後でも大きさを変えられると聞き、魔力を込めて2メートル四方の箱をイメージし、その入り口を腕時計と合わせる。光と共に箱が腕時計に入って行った様な感じがした。

 「出来たかな??」

 少し不安になりながらも腕時計をアイテムボックスと思って触ると、

 「ある!!! 空間があるような感じがする!!」

 腰に挿していたナイフを空間に入れるイメージをすると、目の前からナイフが消えた!!

 (アイテムボックス作成おめでとうございます。)

 アリスの声が喜んでいるように聞こえた。
 その声を聞きながら、ナイフを取り出したいとイメージして腕時計に触れるとナイフが出てきた。

 「これがアイテムボックスか。すごいな。」

 (次はそのアイテムボックスに時間停止を付与しましょう。アイテムボックス内の時間が止まっているイメージをして魔力を込めて下さい。)

 おれはアリスの言葉通りアイテムボックス内は時間が止まっているように魔力を込めてイメージしてみると、腕時計が光りボックス内の空気までが止まったような気がした。

 「たぶん成功かな。試してみないといまいち分からないが。」

 (そうですね。出来てなくてもまた付与すれば大丈夫ですからね。 ヤストは【時空魔法】が大体理解できましたか?)

 「大体理解したよ。 時間と空間か、この魔法は使い方で何でも出来そうな気がしてきた。」

 (【時空魔法】はそれだけすごい魔法です。 ヤストのイメージが試されますね。)

 おれは想像も妄想も得意だし、例の病気もプラスに作用しそうなので【時空魔法】はまさしくチートだという事が理解できた。
 すぐにアリスが最初に話した「次元刀」を試してみようと、近くの直径15センチ程度の木を真横に切るイメージで、

 「次元刀!!!」

 倒れていない・・・
 右手で切る様な動作までしたのに・・・
 ・・・・・恥ずかしい・・・・・・

 恥ずかしがっているとアリスが、

 (ヤスト良く見て下さい。成功ですよ。)

 近づいて良く見ると切り目がある。木を触ると切り目から上が倒れ、年輪が現れた。

 「成功だ!!」

 (おめでとうございます。攻撃魔法もイメージが大事なので技名を言うのは良いと思います。しかし人前ではあまり叫ばないほうが良いかと・・・)

 最後は俯きながらも褒めてくれた・・・

 と思ったとたん、めまいがし膝を着く、

 (大丈夫ですか!?)

 アリスが慌てて近づいてくる。

 MPが切れると気絶する事から、MPが無くなっているのではと思いステータスで確認してみると、残りは2しか残っていなかった。

 「大丈夫。めまいがしただけだよ。MPが2しか残っていないからだと思う。」

 (魔力欠乏ですね。初めてなのに確認を怠りました、申し訳ありません。 見張りは私がしますから横になっていて下さい。)

 ホッとしたような後、悔しそうな声のアリスに言われ、地面に横になる。

 「おれが調子に乗りすぎていたんだ。こっちこそごめん。」

 そう言いながら、眠りに落ちた。 




 目が覚めた時、心配そうな目で見つめるアリスと目が合った。

 (気分はいかがですか?)

 「大丈夫そうだよ、心配かけたな。」

 1時間程度眠っていたらしい。
 村が近いこともあり魔物も近づいて来なかったそうだ。

 (今日は戻りましょう。ムリはしないで下さいね。)

 心配そうな声のアリスに、頭を一撫でして分かったと返事をした。
 村の入り口でガイムに挨拶をし、宿に帰ってから、ベットに寝転ぶ。
 アリスが寄り添ってきたので撫でていると、また眠りに落ちていた。




 「ごはんだよ。」

 マールの声で目が覚め、昼食も食べていなかった事を思い出したら、急におなかが空いてきた。

 「もう大丈夫だが、おなかが減ったな。」

 (私もです。)

 アリスと食堂に行き、お代わりまでして夕食を食べた。

 「もうMPは80まで回復しているから大丈夫だからな。お腹もいっぱいだし。」

 笑顔でアリスに話しかけると、ようやくアリスも元気が出てくれたようだった。
 その日はおれが練習の為にも自分とアリスにクリーンをかけて1人と1匹でベットに入った。
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