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第3章 偽りの王
中央大陸へ行くには
しおりを挟む「さて、この街について早四日。
そろそろ中央大陸へ帰還する方法について模索しなければな」
なんだかんだで、昨日はハッカータの街を満喫してしまった。
戦争を控え、すっかりお祭りムードの様子に飲み込まれてしまっていた。
何食わぬ顔でピシリと場を仕切っているアリスだが、彼女も一緒に楽しんでいたのを忘れてはいけない。
「そんな急ぐ必要あるか?
こんな大きな街なんだ、もう少しゆっくりしようぜ」
「馬鹿を言うなラック。
今がどんな状況なのかわかっているのか?
戦争の一歩手前なんだぞ。
聞く話によると、中央大陸側も戦争の気配を察し、大陸の境界付近では既に戦時へ向け準備を整えているとのことだ。
このまま行けば、一ヶ月もしないうちに軍は編成を終え、進軍を開始するだろう。
そうなれば中央大陸への渡航は一層厳しくなる」
「だからと言って、今だって似たようなものだろう。
既に渡航制限は掛かってるんだ。
特別な理由でもなければ無理なんだよ。
急いだって何にも変わりはしないさ」
ラックはベッドへ身を投げ、アリスへ足を向ける。
「ちーちゃんもやるー!」
「ぐぇっ!」
ちーちゃんはラックの上へと飛び乗り、その反動をうけ嗚咽を吐く。
「こら、ちーちゃん、ベッドの上で遊ばない!」
「はーーい♪」
「全く、ちーちゃんだって早く家に帰りたいだろう?」
アリスに問われちーちゃんは少し考える。
しかしそれも一瞬のこと。
「ちーちゃんはね、もう少しいろんな街を見てみたいな」
「だよなー、ちーちゃん。
せっかく旅してるんだ、少しくらいゆっくりしたいよな。
アリスも考えてみろよ。
俺たちはトトリの街を出てからと言うもの、ロクに休んでないんだぜ。
このままだと、俺達はいいとしても、ちーちゃんの体に無理がたたる」
「むっ・・・」
ラックの最もな説得にアリスは口を噤んだ。
目的ばかりに目がいって、ちーちゃん本人のことを考えていなかった。
確かに旅に次ぐ旅で、ベッドの上でゆっくりと過ごした日など数えるほどだ。
アリスはそれに慣れていたから気づかなかったが、ちーちゃんは子供なのだ。
「確かに、そうだな。
ラックに説得されるとはな」
「なんだよ、俺だって色々考えてるんだぜ」
「・・・いろいろねぇ」
疑いの眼差しでラックを見る。
胡散臭さに関して右に出るものがいないラックである。
「俺を誰だと思ってる?
表も裏も、酸いも甘いも知り尽くしたラックさんだぜ。
焦らなくても、中央大陸へ渡るための伝手くらい、考えてあるよ」
偉ぶりつつもラックは少しばかり苦々しい顔をした。
目線は貧困街へ向けられ、そこには少しばかりの懐かしさが含まれていた。
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