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第1章

名倉・一香

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——中学でバスケ部の幼馴染がイジメられていた。
それに我慢ならなかった俺は怒鳴り声を上げいじめっ子たちといじめを見て見ぬ振りをする人達に向かって必死に訴えた。
まぁそれで万事解決するはずもなく矛先は俺に変更。
あろうことか幼馴染まで俺をイジメる始末。
それで中退した俺は人生に飽き飽きしていた。

「もういっそ…死ねたら楽だろうか。」とそう思った時、パソコンに一通のメールが送られてきた。
件名は『異世界転生をする方法。』
宛先は不明。
明らかに不審なメールだったが気になり封を切った。
するとメールにはぎっしりと文字が書かれていた。
なにやら書かれているのはとある自殺方法についてらしい。
「くっだらね。」と思いつつも視線を走らせる。
……3分クッキングの要領ですごいグロい画像とともに分かりやすく解説されている。
とりあえず俺は半信半疑……というよりモロに疑いつつも色々な用品を集めた。

✳︎    ✳︎    ✳︎

——一週間後。
遂に全ての道具を集めた。
早速取り掛かる。
まずは遺書。
『拝啓。俺はこのくだらない世界を卒業します。実際、イジメが原因で自殺って結構ニュースになりますよね。だから多分この遺書もテレビで公開されたり。……折角だからなんか面白いことを書いてやろうと思いましたが特にないのでこれにて失礼します。敬具。』
よし、次。
次は魔法陣。
何やらナイフを口に咥えボールペンで5c㎡の正方形の紙に正三角形を2つ書く。この時三角形の頂点がお互い重ならない様に六芒星を描く様に書く。
よし、次。
ナイフを咥えたままハサミで自分の髪の毛を適当に切り、それを魔法陣の真ん中に置く。
ほうほう。
「そして最後は魔法陣を左手で握りしめナイフを両手で持ち…心臓を貫く。と。」
ここにきて急に手汗が酷くなる。
でもあの憎き幼馴染やいじめっ子の顔を思い浮かべ、憎悪の感情を自分に叩きつける様に。
心臓をナイフで貫いた。
ひどい吐き気がする。
多分心臓は貫けた。
刺した部分から血液が溢れてくるのが分かる。
血液が暖かい。
遂に俺は死ぬんだ。というのを感じた。
仰向けに崩れ落ちるように倒れる。
頭を打っても痛みがない。
そして段々意識が遠のいていく。
「俺……やっと楽に……」
体から自分が抜けて、
天に向かって昇っていくのが分かる。
しかし。
天に召されようとしていた時、
首根っこをガシッと掴まれる。
「やっぱ……地獄かよ」と霊体の俺は呟いた。
でも、俺は上にも下にも引っ張られない。
徐々に視界が暗くなっていく。
疑問ばかりを残して俺は意識を失った。
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