最強の剣士は最弱の弓師を演じなければ。

——クリーパを食べた後、俺とルルは服屋に訪れていた。
その発端はこうだった。
「……ねぇ、ルルちゃん。服買いに行かない？」
「……フードついてる服なら着てもいい」
「よし決定」
かくして二人は服屋にいるのだが
最初は乗り気だった一香よりルルの方がテンションが高い。
「……これ、完璧」
「とりあえず試着してみる？」
というわけでルルは試着室に白いローブを持って入っていった。
その間、俺は主にバッグや潜伏魔法や認識阻害魔法などの強化魔法の施された服を見ていた。
「服の裏地に魔法陣……ねぇ。いや～な思い出…というか黒歴史って言うのかな。学生時代の——」
とそんなことを呟いていると不意に声がかかった。
「お客様、お探しの品は見つかったでしょうか」
振り返るとそこには金髪の男性。というより男の子と言った方がいいだろうか。
可愛らしい男の子が執事が着ていそうな格好をしていた。
「えっと……今連れを待ってて。俺自身は特に」
「左様ですか。……あの」
「ん？なんですか？」
「え～……。今日の夜、またこの店を1人で訪れてはいただけないでしょうか。」
「別にいいけど。理由を教えてもらっても？」
「それは……」と顔を逸らす。
「すみません教えれないんですっ。」と言ってその男の子はカウンターの奥へ走っていった。
「……あの女狐め」
「お、ルルちゃん。試着したのか」
白いローブを身に纏ったルルが試着室から出てきた。
そのローブには色々な強化魔法が施されており、中でも認識阻害魔法がとても有能だ。
その魔法は着ている本人の顔を声などをしっかりと認識できなくなる。
つまり、その状態で犯罪などを犯し、血だらけになりながらナイフを持って街中を走り回っても、フードさえ取れなければ誰かバレることはないらしい。
「……どうですか。」
「いや、どうって言われても。控えめに言って一生愛でたい感じですかね」
「っ!?」
「え？いや普通そうでしょ。しかも変幻魔法のおかげでフードにルルちゃんの形に沿うように猫耳があるし、尻尾もしっかりと出てるし。もうこれ以上ない服装だね」
ルルはしばらく黙っていたがその後「これにする」とだけ言ってその服を買った。