種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市編

落下の先は

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「くっ……!!」


レノは右腕の「銀の鎖」を伸ばし、地下迷宮の天井目掛けて鎖の先端の聖爪(ネイルリング)を放つ。何とか五つのリングを天井に突き刺すことに成功すれば落下は免れそうだが、


ガシィッ!!


「なっ……!?」


鎖が天井に辿り着く寸前、足元に何かが絡みつき、下を除くと地割れの間から植物の蔓らしき物が巻き付いていた。そのままレノは蔓に引き寄せられ、地面に生じわた地割れに飲み込まれる。


「……くっ……」


蔓に引き込まれるままに亀裂の最深部に落ちていくと、ついには無数の瓦礫で覆われた地面の終わりに辿り着く。咄嗟に直に衝突を避けるため、右腕の銀の鎖を回収し、先端部の聖爪を取り付けると、


「らあっ!!」


ズドォオオオオンッ!!


聖爪に魔力を送り込んで瓦礫に叩き込み、そのまま破壊する。


ズガァアアアアアアンッ!!


「えっ――」


瓦礫を粉砕して地面を突き抜けると、そこには予想外の空間が広がる。落下する間に周囲を確認すると、そこには上の階層とは違う構造の「迷宮」が広がっている事に気が付き、レノは自分が第二階層にまで落ちた事に気が付く。

そして、真下には第二階層の中心部である大広間が広がっており、最初に目が付いたのは一本の巨大な「大木」が迷宮内の天井を貫き、先ほどまでレノが居た第一階層にまで繋がっているのを確認する。先ほど右足を拘束しているのは地面から何故か伸びている巨大な大木に巻き付いている蔓であり、何時の間にか巻き付いていたはずの右足は解放されていた。


「くっ……絡みとれ!!」


これ以上の落下を防ぐため、銀の鎖を大木に向けて放ち、今度こそ大木の枝に絡みつかせて落下を止める。


ジャラララッ!!


「あぐっ!?」


右腕に凄まじい衝撃が走り、脱臼しかけるが何とか激痛を堪えて地面の衝突を防ぐ。そのまま大木に接近し、すぐ傍の枝に足を掛ける。


「……何なんだ一体……」


眼の前の」大木」は幼少の頃に見たエルフの集落の樹木よりも遥かに巨大で力強さを感じる。レノは痛む肩を抑えながら、下の方を覗くとまだ地上までは200メートル近くは離れているが、銀の鎖や嵐の魔法を利用すれば降りれなくはない。

しかし、この距離からでも広間からは異様な空気を感じ取れる。まるで、「白狼」クラスの巨大な生物が佇んでいるような雰囲気だ。


「……ん?」


再び紋様が光り輝き、この地面に彼女が居る事は間違いない。仕方なく、樹木から降りようとした時、



――ズガァアアアアアアアンッ!!



「ッ!?」


迷宮全体に響くほどに巨大な破裂音が響き渡り、レノが身を任せている大木が大きく揺れ動き、


グラァッ……!!


「……冗談だろ?」


下を覗くと、どうやら大木の根元の部分が引きちぎられたように破壊されており、大木が傾いているのだ。一体地上で何が起きたのかは分からないが、少なくとも冗談抜きで白狼クラスの化け物が潜んでいるのは間違いない。


「ええい……どうにでもなれ!!」


ドォンッ!!


大木が完全に倒れ切る前に枝から飛び降りると、レノは聖爪を装着し、


ガガガガガッ――!!


「悪いっ……!!」


大木の樹皮に爪を搔き立てながら、最低限のブレーキを掛けながら地面に目掛けて落下する。樹木を傷つけるの半分は森人族(エルフ)であるレノには苦痛の行為だが、状況が状況のために仕方がない。


ズズゥンッ……!!


「うわっ……!!」


一層激しく揺れ動き、聖爪が樹皮から離れると、そのままレノは空中に放り出されてしまう。


ガシィッ!!


「えっ」


だが、落下の際にまたもや無数の蔓が大木から放たれ、レノの全身を覆い尽くすとゆっくりと下降させる。


「……あと少し」


大木が完全に倒木する前に、レノの身体は無数の武具が地面に突き刺さっている大広間にゆっくりと着地させると、


ズガァァアアアアアアアッ――!!


役目を終えたとばかりに大木は横倒れになり、そのまま迷宮内を派手に破壊しながら激しい土煙を上げる。何がどうなっているかは分からないが、1つだけ言えるのはこの大木のお蔭でレノの命は助かったのだ。


「……ありがとう」


倒れ込んだ樹木に一言だけ礼を言うと、自分をこの場所まで誘導したであろうアイリィを探す。


「いや~……随分と遅かったですね」
「お前……」


あっさりと彼女が自分の隣に立っている事に気が付き、特に悪びれもせずに笑いかけて肩を組んでくるが、何処となく苦笑い気味に思える。状況は不明だが、常に余裕の態度を浮かべている彼女がこのような顔をするなど、余程に切迫とした状況なのだろう。


「……来ますよ」


ブワァアアアアッ……!!


周囲に派手に巻き上げられた土煙を振り払い、全身を黒い甲冑で覆い、腰には神々しい光を放つ長剣を射し込んだ甲冑の騎士が出現する。レノはすぐに騎士が装備しいてる異様なまでの魔力を感じさせる長剣こそが「カラドボルグ」に気付くが、レノが所有している聖爪よりも遥かに迫力を感じさせる。


「あの剣?」
「ええ……私の聖剣ですよ」
「そうかい……で、あれは?」
「ゲームで例えるなら、聖剣を手に入れるためのイベントボスですよ」
「あれ四人パーティーで倒すクラスだろ……」
『ふざけるのはそこまでにしろ』


直接脳内に甲冑の騎士の声が聞こえ、レノは聖爪を構えると、


『……エクスカリバーの欠片?そんなもので、この私に勝てると思って――!?」


言葉を言い終える前に、甲冑の騎士はレノに視線を向けた途端、その場で硬直する。不思議そうに甲冑を見つめていると、


『まさか……お前、いや……そんな……どうして』


明らかに狼狽した甲冑の思念が送り込まれ、レノはアイリィに視線をやると、彼女は今までに見たことが無い神妙な表情を浮かべ、


「……集中してください。あれは敵ですよ」
「え、あ、ああ……」


あまりにも真面目な答えにレノは振り返り、甲冑の騎士に構えると、


『そうか……そう言う事か……アイルゥウウウッ!!』


激昂したように甲冑の騎士は全身を震わせ、腰に差した長剣に掌を伸ばし、



ドゴォォオオオオオオオオッ――!!



柄に触れた瞬間、凄まじい衝撃波が辺りを覆い尽くす。
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