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第二章

実技の授業①

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俺は朝起きた。
するといつものように右隣にリンが寝ている。
更に今回からは左隣にメリィが寝ている。
そしていつものようにジルが恨めしそうな顔で見てくる。うん、いつもの朝だ。
とりあえず、今日も学校なので二人を中に入れてジルと学校に行った―――



俺は教室にはいると、自分の席に座った。
ガルド先生が席は決めるのが面倒だ、という事で初めに座った一番後ろの窓際になった。
クラスに変わった気配はなく至って普通だった。
クラスの女子可愛いランキングを付けてる男子もいれば、男子がキモいと陰ながら言っている女子もいる。
そこに通学した俺に気付いたのか、シャル・カシエルが俺にところに来た。

「クロード!昨日のあれはなんですか?」

あぁ、見たのか。
洗ってから渡した方が良かったかな?
暗殺者の首、人の首なんか見るのが初めてなのだろうか?
そのせいで寝れなかったのか目の下にクマがある。
俺は人を殺すのなんて人型の魔物を殺すのとあまり変わらないから、慣れた。
慣れていいものか知らないが…

「悪いけどクロードって呼ばないでくれるか?間違えてお前を殺してしまうかも知れないから」

その言葉に昨日の重力のトラウマが蘇るのか俺をクロと呼びはじめた。
でもな、あの程度の重力でトラウマ抱えてもらったらこの先、生きていけないぞ?

「ではクロ、何故クロードと呼ばれるのが嫌なのですか?」
「お前ホントになんも知らないんだな?」
「クロ、あれ見せるのか?」

ジルにはもう今までの経緯を全て説明した。
昔、カシエルの人間だった事、才能が無いと思われればすぐにポイ捨てされた事、それから不死鳥に育てられた事。

ちなみにあれとは森に捨てられた日に渡された手紙だ。
俺はあの手紙を持っている。
何故?そんなのこれがあの家がゴミだって証拠だからだ。
実の子供を死の森捨てた事実、国のどっかの機関に出せばカシエル家をもしかしたら追い詰められるかもしれないが、どうせ権力せ揉み消される。

それをシャル・カシエルに見せたら戸惑っている様子だった。

「ご、ごめんなさい」
「いいんだ、謝られても許す気はないから」
「……そ、それでクロ、お父様から伝言よ」

伝言?何だろう?
謝るのだろうか?
まぁ、謝られても絶対許さないけど…

「もう一度、家に来てやり直そう…って」
「あ?」

…伝言が斜め上過ぎて、吐き気がするな…俺は無意識に教室全体に行き渡るほど重力と殺気を放った。
重さはシャル・カシエルに以前かけた重力の二倍ほど、それでもまだレイン・カシエルに与えた重力には及ばない。
そう考えると、レイン・カシエルは結構丈夫だったと言う事か。

教室の壁は少しピキッという音をだした。それでも学園全体に特殊な魔法をかけてるらしいのでこの程度じゃ壊れない。まぁ、この状態が続けばさすがに壊れるが…

俺とジル以外は全員重力によってその場に倒れた。何名か失神してる奴もいる。
ってかジルってどうやって耐えられるんだよ…普通は他の奴みたいに倒れるけどやっぱりジルは相当の実力があるんだろう。
今度どれだけ耐えられるか実験してやろうか…

「(クロ!落ち着いて!)」
「(それ以上やったら教室壊れますよ!?)」

二人が声をかけてくる。
俺は教室に自分の結界を張り強化した。これで壊れはしないだろう…
まぁ、それでも続けたら壊れるだろうけど…
しかし、これ以上やったら体が弱い奴なら死者が出そうなので重力を切った。

「カシエルのお嬢さん、すいません、取り乱しました」

謝る気ゼロですいませんと言ったが、相手からどう思われてるのだろう?
まぁ、どう思われても俺は気にしないが…
シャルはとても話せそうな状況ではなかった。
以前の弱い重力でさえ疲れきっていたので当然だ。

そこへガルドが入って来た。

「はーい、予鈴なってんぞ~席つけ~い」

ガルド先生は教室の異変に気付いた。生徒が数名失神、他の生徒も床に倒れている。
そこで倒れてるシャル・カシエルに殺気を向けている俺が一番先に目に入ったのかガルド先生は俺の元に近寄る。

「……クロ、何した?」
「……重力波を放ちました」

ここで嘘をついても意味が無い。
何故なら、クラスでは今話せそうなやつは俺しかいないからだ。
ジルも大丈夫そうだが、実際は少し疲れているようだ。
「もう少し鍛えないとダメだな…」とも言っている。
俺は説教を喰らいました。そのあと全員に治癒魔法をかけて授業を再開した。

「今日は実技の授業だ!着替えて校庭にでろ!」

俺達は学校の支給品なのか腕輪を渡された。その腕輪は自分の力に応じて防具、武器を出すものだった。
一度使うと所有者は登録されて、武器もしまえるらしい。
その中でシャル・カシエルはとても注目を集めていた。
何故なら、彼女が腕輪で出した装備はBランクモンスターの水龍の皮で編まれる知名度の高い【水龍のローブ】だったのだ。

俺は黒いライトアーマーに黒いコートだった。
ライトアーマーは腕と膝を覆い物と、胸当てだけだが、よく見るとこれはSSランクモンスターの【暴龍・バハムート】鱗で出来たライトアーマーとその皮で編んであるコートだった。
【暴龍バハムート】自体が伝説上の生き物でどんな姿か誰もわからないので、知名度が低い。ちなみに俺はレイチェルさんの家の倉庫に一枚鱗があったのですぐにわかった。

ちなみにランクはSの次がSSではなく、Sの次はSFなのでシャル・カシエルの出した水龍のローブよりランクが九ツ違う。

次にジルが出した装備だが、SEの素材【金剛石】の銀色の重鎧だった。
金剛石とは、まぁ簡単にいえばダイヤの原石だ。
ダイヤは見たことある奴はいると思うが原石は見たことが無いと思うので誰も気付かなかった。
俺は死の森でたまに見つけることがあるので分かる。

◆◇◆◇◆校庭◆◇◆◇◆

「おぉ~校庭広いな~」

子供見たいにはしゃぐジル、俺も少しワクワクしている。
俺は木々は生い茂る森でスペースを利用する戦いをしていた。
なのでこういった広い場所で力を使うのは初めてなのだ。

「よし、準備出来たようだな」

ガルド先生が普通のスーツに大剣を持って地面に刺し、仁王立ちしている。
スーツなのはこれから汚す事が無いということ、つまり、ガルド先生は俺達を実際教える気はないという事だ。
ガルド先生らしい適当振りだ。

「まず体を慣らすため、準備運動をしろ」
「ガルド先生!俺重鎧何ですけど!?」

たった一人の重鎧のジルが叫ぶ。
そりゃそうだ。重鎧なんて着てたら準備運動なんてとてもじゃないが出来ない。
ジルだと分からないけど…

「それは自分を呪え、よし始め!」

ジル可哀相に…
まぁ、さっきの重力で鍛えないと、とか言ってたし丁度いいだろう。
軽く運動した後に説明が入った

「この中で使い魔がいる奴はいるか?」

数名手を挙げたその中にはシャル・カシエルの姿もあった、俺は手を挙げなかった。理由はフェニックスとアスモデウスなんて使い魔にしていたら騒ぎになるからだ。

「おいクロ、お前も手を挙げろ使い魔いるだろ」

ガルド先生に指摘され渋々手を挙げる。
…そういえばガルド先生はリンがフェニックスだって知らないんだった…

「今日は、使い魔のいる奴の使い魔で説明する誰か使い魔を出してくれる奴はいるか?」

ガルド先生が聞くとシャル・カシエルが手を挙げる。
相当自信があるのだろう。
目が自慢したいと言っている。

「よし、カシエル、前に出て使い魔を出してくれ」

シャル・カシエルは前に出て使い魔を出した。
その使い魔は火の天族だった。
姿は執事が着るような服で、顔は白髪のオッサンだな。
顎髭があり、第一印象はダンディな執事だが、周りに漂う魔力で相当の実力者だと分かる。
強さはBランクのクレイジー・ボアと同じぐらいだろう。
いっつも三秒で倒せるから分かる。
そんぐらいの強さだ。
クラスがざわついた

「マジか!天族!?スゲー」
「やっぱりカシエルさんは違うな~」
「いいね~食べ頃じゃぁ~んウヒヒ」

おい最後の誰だ…この前と同じ奴だろ…
ってかカシエルに食べ頃と言っておいて、白髪のオッサンも食べ頃というなら、どっかの赤ん坊でも同じこといいそうだな…

「人間達よ、静かにせぇ」

魔族、天族から上のクラスは言葉を話せる奴がいるらしい。
クラスの奴らは静かになった。天族は怒らせると大変なことになるかららしい。
それだけ強いという意識があるかららしい。

「それじゃあ紅、先生にやることを聞いて」
「じゃあ紅さん、さっそくだが「待ってくだされ」…」

紅が俺を睨みつけた。

「私は倒さなくてはいけない者がいますので…」

はぁ、まぁだいたい予想は出来てた。
あれだろ?さっきの重力の件だろ?
紅は俺に近付き、炎の槍を空間から造りだした。

「ほらジル、天族さんが怒ってるぞ謝れ」

俺はとりあえずジルに話を流した。
紅は額に血管を浮かばせた。
相当きれてるらしい。

「いや、明らかにお前に怒ってるぞ…」

ジルは呆れたように返した。
だって、ここで目立ちのはクラスでの悪目立ちに繋がる。

「どうやら今すぐ死にたいようだな…」

あらやだ、紅さん超お怒り。

「待って!紅!彼は…」

シャル・カシエルが話に割り込む。
まぁそうだよな、自分達の家が酷いことをしたのに、それを怒るなら理不尽というものだ。

「お嬢様、これは私のプライドの問題なのです。お嬢様がここまで言われて黙っている従者はおりません」

おー、カッコイイ。ってか俺悪役みたい(笑)

「私はお前に決闘を申し込む!」
「ルールは?」

俺がとりあえずルールだけ聞いてみる。

「どちらかが死ぬか降参した方の負け、降参したら死んでもらう」

なるほど、デスマッチね。

「使い魔は使っていいのか?」

俺はとりあえず聞く。
でも、使ったら一瞬でこいつ死ぬぞ?

「良いだろう、そうでもしなきゃ貴様に勝ち目は無いからな」

紅さん、余裕そうですね~。
挽肉にしたいけど、ここは抑えよう。

「ふ~ん、まぁめんどくさいからパス」

俺は華麗にパスする。
だってさ、このまま行ったら使い魔を出せよ、とか言われるじゃん。
使い魔を出したらリンとメリィは人型だから、絶対に天族、魔族以上の存在だと思われるから面倒くさいのだ。

「な!逃げるのか!」
「いや、始めから受ける気はなかったし」

俺は授業に戻ろうと背を向ける。

「貴様!待て!」

紅が俺の肩に手を置こうとする…が俺は手を掴み、少し力を入れる。
本当に少しだ。

バキバキ

すると紅の手から痛々しい音が鳴る。
紅は俺の肩を潰した気でいるようで、余裕そうな表情をしている…
その直後…

「ぎゃああああああああ!!」

紅は叫び出す。
クラスは騒然とする、理由は天族に人間が力押しで勝ったからだ。
基本、使い魔は魔物か、精霊を使役するものだ。
天族や魔族は強くて主が逆に殺させるかもしれないからだ。
なので使い魔との友好関係が重要とよく言われるほどなのだ。
そんな天族に人間が勝てる事は通常、ありえないことだ。

「決闘するとお前が死ぬからパスしてやってるんだ、だからお前も俺に挑もうとしてんじゃねぇよ」

俺は小声で殺気を込めて言った。それを理解してくれたのか紅は前に戻ってくれた。俺は何もなかったかのように、その場に座る。


さて、授業が始まる。
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