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【第2部 瞳の中の漁火】 冷たい部屋

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薄暗い部屋で、摩耶は、1人ソファに横たわっていた。冬だというのにエアコンも消された室内。
その冷えきった空間に、美菜は下着姿のまま動けずにいる。

熱い。。とても熱い。。
手足は氷のように冷たくなっているのに、背中だけが灼ける程熱い。

今は自分で見る事が出来ないが、背中はきっと無数のミミズ腫れや傷、痣で覆われているに違いなかった。

なぜなら。。

摩耶は、つい先程まで、鞭で背中を滅多打ちにされていたのだから。

ダイニングに目をやると、テーブルの上にコーヒーカップが1つ置かれている。

彼女が飲んでいったのだろう。
暗闇の中、かすかに見える湯気が、彼女がまだ帰って間もない事を摩耶に伝えている。

熱い。。とても熱い。。

相変わらず、彼女は遠慮というものを知らない。本能剥き出しで摩耶を責めてくる。

ありったけの力で背中に打ち込まれる鞭の痛みは凄まじいものがあった。渇いた音とともに全身を突き抜ける衝撃、思わず〝待って!〝と、リセットして欲しくなる程の痛み。

私は、ようやく体を起こし、這うようにしてダイニングテーブルのところまでたどり着いた。
そして、彼女の飲み残しのコーヒーを頂く。

熱い。。とても熱い。。

でも、明日の夜にはこの痛みも甘美な刺激に変わる。その為に、摩耶は歯を食いしばって耐えたのだから。そう、この程度の苦痛など、明日の〝楽しみ〝に比べれば、囁かな代償に過ぎない。
摩耶は、自分が急激に背中の痛みを忘れていくのを実感していた。思わず口元が緩む。

〝美菜、楽しみにしていなさい。明日はたっぷり可愛がってあげるからね・・〝

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