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フルオート

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゛タタタタタタタタッ!。。タタッ!タタタタッ!゛

地下室に乾いた連射音が響き渡った。

摩耶は、銃をフルオート機能付きのタイプに持ち変えていた。
わざと詠美を怖がらせる為に彼女の足元に向かって1マガジン分を掃射したのだ。

「今度はこれよ。」


摩耶は詠美に近づいて銃を見せた。
彼女は相変わらず壁に磔にされていたが、今は壁に背中をつけ、こちらを向いた状態で拘束されている。


「いや!絶対嫌だ!ねえ摩耶、もう止めてよ。私たち友達でしょ?何でこんな酷い事するの?私あなたに何かした?」

詠美は泣きながら摩耶に訴えた。
またこの質問だ。毎回毎回同じ事を答える側の身にもなって欲しいものだ。

だが、この質問は摩耶にとっては、実は何度訊かれても気分の悪いものではなかった。それどころか、何度でも訊いて欲しいとさえ思うのだ。

突然理由も分からず拘束され、拷問にも等しい虐待を受けた事に対する、獲物達の苦しさ、恐怖、怒りなどのやり切れない思いがこの言葉に凝縮されているのだ。

獲物達から発せられるこうした心の叫びは、摩耶の加虐心を満足させる最高のスパイスとなる。

以前、苦痛の度合いを決めるのは責められる側の精神状態だと言ったが、それは責める側も同じ事なのだ。

加虐の悦びは、どれだけ相手を精神的に追い込むかで決まる。
そういう意味では、責め道具によるデモンストレーションは重要だった。

摩耶は泣きじゃくりながら自分を見ている詠美にピシャリと言い放った。

「私はあなたの事、友達と思った事は一度もないわ。私はただ、あなたをいたぶりたかっただけ。今日という日を待ち望んでいただけなの。
あなたを虐めたい理由は簡単よ。あなたが可愛いから。あなたにその綺麗な声で悲鳴を上げて欲しいからよ。ごめんね、これでも少しは悪いと思ってるのよ。あなたには何の罪もないんだから。」

「そ、そんな。。酷いわ。」

詠美は悲しい表情で言った。

「友達だと思ってたのに、摩耶みたいな綺麗な友達が出来て。。私の自慢の友達だったのに。。」

詠美はうつむいてシクシクと泣き始めた。

摩耶はゆっくりと詠美に近づいた。
そして、彼女の頬を優しく撫でながら言った。

「そんな風に私の事を思っててくれたの?」

「嬉しいわ。さっきは酷い事言ってごめんなさい。。」

摩耶は、彼女の両足首を拘束している手錠を外した。
詠美が顔を上げて摩耶を見る。

「私を解放してくれるの?」

摩耶は、彼女に微笑みながら言った。

「ええ、足だけね。」

「え、どういう事!?」

摩耶はそれには答えずに、詠美から離れて椅子のところに戻った。
そして、彼女に背を向けたまま大きな声で言った。

「そんなに私の事が好きなら、踊ってくれるわよね?私の為に。さあ、舞台の時の様に華麗に踊って頂戴!」


摩耶は机の上のエアガンを掴むと、振り向きざまに詠美の両足を狙ってフルオートでBB弾を撃ち込んだ。

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