上 下
308 / 424
神の手

4

しおりを挟む
「ど、どうしてそれを二階堂さんが。。」

美咲は何が起きたのか、冷静に分析出来なかった。確かにあのカードはあそこに隠した筈だったのに。。

二階堂は、そんな動揺する美咲を不敵な笑みを浮かべながら睨みつけた。

「お前の行動を監視してたんだよ。今夜はずっと。」

「なんですって!一体何の為に?」

「言っただろう。お前を潰す為さ。」

二階堂の目の色が変わった。

「お前が、財布を盗んだ赤いコートの女、あれが誰だか分かってんのかよ?」

美咲は二階堂に連れられて、再びワールドバザールに戻ってきた。どの店も、閉館前に最後のお土産屋チェックしようというゲスト達で溢れている。

「さ、さあ、知らないわ。どうせ、どこかの組のチンピラの女でしょ。」

二階堂にカードを持たせたまま、逃げ出す訳にはいかなかった。二階堂は、自分の仕事の一部始終を見たと言っている。あのカードを持っている以上、それは真実だろう。とすれば、例えこの場は逃げ仰せたとしても、二階堂にチクられれば一巻の終わりだった。

財布を奪った相手の素性も分からない今、美咲は二階堂の言いなりになるしかなかった。

「嗅覚が衰えたわね。あの女がそんな安物に見えるなんて。」

「じゃ、あの女は誰なのよ?」

一抹の不安を感じ、美咲は二階堂に訊ねた。

「チャイニーズマフィア、゛炎龍゛日本支部の女ボス、美羅だよ。」

「美羅。。あ、あの女が。。まさか。。だ、だって顔が。。」

信じられないといった表情で、二階堂の顔を見つめる美咲。

「ふん、お前みたいに粋がって独りで仕事をしている一匹狼タイプは情報が遅いのね。つい最近整形したんだよ。あいにくだったわね。これでお前も終わりね。」

二階堂は、美咲の危機が楽しくてたまらない様子だった。

ヤバい。。
状況は深刻だった。
火龍といえば、最近関東を中心に活動している新興組織だ。麻薬、人身売買などにも幅広く手を出していて、その凶悪なやり口は、中国本国でも他のファミリーから゛やっかい者゛扱いされている程だった。しかも、日本での主要な財源の1つが美咲と同じスリ稼業で、腕利きだけで構成されたスリチームを抱えていた。

日本に進出してからも、無節操に他の暴力団のシマを食い荒らし、勢力を拡大していた。



しおりを挟む

処理中です...