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呪いのわら人形

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「皆様、今夜のメインゲストが決まりました。39歳の若さで世界的に有名な自動車会社の社長をされています、関本博隆様です。」

再び場内に割れる様な拍手が響くと関本は場内の他のゲストに手を振って応えた。

「ええ、それでは早速、今夜関本様から頂いております、我がNaturalFaceセクション96へのご要望事項を発表させて頂きます。関本様、どうぞこれを。」

麻耶はそう言って、関本に何か粗末な人形の様な物を渡した。美穂には、リゾートで売られているお土産品の様にした見えなかったが、受け取った関本は目を輝かしながらそれに見入った。

「逸見支配人、で、ではこれが。。。」

マイクを向けられた関本は興奮しながら麻耶に尋ねた。

「はい。呪いのわら人形です。
では、関本様の願望について、ご本人様から皆様にご説明頂けますでしょうか。」

関本は、まるで玩具を与えられた子供の様にその人形を見つめていたが、やがて麻耶からマイクを受け取ると、上ずった声で話し始めた。

「僕は、小さい頃から呪いのわら人形に憧れてきました。それも、神社の境内で夜中に釘を打ち込む奴じゃなく、針を刺すと、相手の体の同じ部分が痛くなるという、あれです。あんなものが現実に存在して、それを使って美しい女性を心行くまで責められたらどんなに興奮するだろうと何度も夢見ました。
しかし、呪いの人形など現実には存在する筈ないので、諦めていました。が、NaturalFaceなら不可能を可能にしてくれると聞いて、今回応募した訳です。」


「それが、それが本当に今夜叶うんですね。」

関本が興奮して麻耶の方を見ると、麻耶はにっこりと笑って大きく頷いた。

「はい。もちろんでございます。そして、こちらがその人形に刺す針になります。」

麻耶は、20cm位のアイスピックを関本に
手渡した。

「では、今夜のイベントの詳細を発表しましよう。
我々は、関本様の願望を叶えるとは申しましたが、現実に存在しない以上、本物の呪いの人形を手に入れる事は出来ません。そこで、我々NaturalFace技術陣は、実質全く同じ体験をして頂くことが可能になるシステムを構築しました。

まず、後ほど発表される今夜のメインキャストには、ある装備を施したレオタードを着せます。そのレオタードの生地には、直径5ミリ程度の特殊装置を無数に縫いこんであります。関本様が、そのアイスピックをわら人形のどこかに刺すと、センサーが反応し、レオタードの同じ場所に縫いこまれた装置に指令が送られます。そして、更に指令を受けた装置は、そのレオタードを着用している人間の神経に電磁波を送り、強さに応じ、痛みを感じたのと同じ作用を発生させます。
これによりメインキャストは、関本様が人形にアイスピックを刺した場所と全く同じ場所に痛みを感じる訳です。」

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