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リアル

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その日以来、加虐の天使は奈緒美のホームページにやって来なくなった。それまではほとんど毎日の様にチャットをしていたのに、どうしたのにだろうか。
奈緒美は、それでも最初は仕事が忙しいとか、出張とか、何かやむを得ない事情だろうと考えていた。

1週間が経った。加虐の天使は来なかった。奈緒美は、掲示板に書き込みをしてみたが、何の反応もなかった。

2週間後、相変わらず加虐の天使からのアプローチはなかった。この頃から、奈緒美の体は、奈緒美自身に加虐の天使に責めてもらえない寂しさを訴え始めた。

体がどうしょうもなく疼く。。

もちろん、その間も奈緒美は自分で考えた自虐で自分の足を責め続けたし、加虐の天使以外人間が書き込んでくるネタも実践した。チャットで責めてもらったりもした。

だが。。
どうしても加虐の天使に責められる程の悦びは得られなかった。

奈緒美の体は、加虐の天使に責められないと満足しなくなっていた。
彼のリクエストは、彼の与える痛みは、奈緒美の体が欲している痛みと見事な程マッチしていた。彼の冷酷さは、恐怖とともに、震える程に興奮を与えた。
まさに加虐の天使は奈緒美にとって理想の相手だったのだ。

3週間が経った。
奈緒美は、体の疼きが限界に来ていた。仕事中もイライラして机に長く座り続ける事も困難だった。

奈緒美は、仕事上のごく些細なトラブルにも、平常心を保てなくなった。日に何度となくトイレに駆け込み、ストッキングを下ろし、自分の太股を思いっきりつねったり、血が滲む程引っかいたりした。自分の首がろくろ首の様に伸びるなら、自分の太股に思い切り噛みつき、肉に深く歯を食い込ませたかった。もし実際にこれが出来たなら、奈緒美は自分の肉を食いちぎっていたかもしれなかった。

しかし、いくら自分で責めてみても、疼く体を鎮める事は出来なかった。それは、灼熱の砂漠を何時間も歩いた後に、たった1滴の水しか与えられないかの如く、辛いものであった。



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