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ホテルの夜

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アキラは、そんな美波の反応を楽しんでいる様だった。

「太股を何回も叩かれたし、体が熱くなっただろ?少しクールダウンしようね。」

そう言うと、アキラはシャワーの栓を開け、水を出すと、美波の背中に水を掛け始めた。

「はうっ、い、いやっ。。つ、冷たいよ。。やめて。。」

美波は体を強ばらせて呻いた。
沖縄とはいえ10月だ。昼間こそ30度を越えるが、夜はかなり涼しい。ましてや、室内とはいえ冷水をまともに浴びて冷たくない訳がない。

アキラは、弱目の水量でヒタヒタと美波に水をかけ続ける。
首、肩、背中、二の腕、太股に、美波の若い張りのある肌に弾かれた水が、たくさんの水玉を形成していく。
ここまでは静かな展開だった。

が、アキラは美波の体が、水の冷たさに慣れてきたタイミングを見計らい、シャワーの水量を最大にした。
それまでとは一転して、冷たさに加え、強い水圧が、美波の皮膚に殴りかかる様な衝撃と針で刺される様な感覚を同時に与えた。皮膚が敏感な美波にとっては、かなりの痛みだ。

美波は全身濡れそぼりながら、体に突き刺さる冷たい衝撃に耐え続けた。
体中が冷えきって、呼吸をするのが辛い。美波の呻きに、次第に嗚咽が混じり始めた。

苦しい・・ただ水をかけられるだけでこんなに辛いなんて。

美波は、自分の心が確実に弱っていくのを自ら感じていた。

そして。。
ようやくアキラがシャワーを止めた。
美波は、寒さに唇を震わせながら、ぐったりとシャワールーム内に立ち尽くした。本当は座り込みたいのだが、両手首を吊られている為、体を休める事が出来ない。

アキラはそんな美波をおいて、リビングに戻っていたが、しばらくすると戻ってきた。

振り向いてアキラを見た美波は、思わず天を仰いだ。

彼の手には、黒光りする革の鞭が握られていた。
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