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【第4部 番外:美女のシリアルナンバー事件編】 1人目の犠牲者

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ここまで言ってしまうと、少し自意識過剰かもしれないが、決して大げさな話ではなかった。
それ程百合子の容姿は人目を引いた。

以前美容院で読んだ事のある男性誌の記事に、〝世の中の美しい女性達はみんな疲れている〝と書かれていたが、多少極端だとしても、これは真理と言えるだろう。



それにしても。。
百合子は思った。
今夜の自分は少しおかしい。
周囲の視線を感じるのはいつもの事だが、それにしても極端過ぎる。
まるで自分の体が何かを警戒しているかの様に敏感になっていた。
こんな事は初めてだった。
文化祭の準備で気が高ぶっているのだろうか。
不安に駆られた百合子は、軽く頭を振って〝気にしない、気にしない〝と2回頭の中で唱えた。

やがて、電車は最寄り駅に到着した。

駅を出ると、百合子は再び走り出した。
家まであと10分、このままのペースなら、11時からのドラマにギリギリ間に合う。
百合子は、テニスで鍛えた長い足で軽快に住宅街を走り続けた。静まり返った空間に、彼女の足がアスファルトの地面を蹴る音だけが響く。普段から車の通りがほとんどなく、危険の少ない道の為、百合子はかなりのペースで飛ばしていた。

だが。。
家のすぐ近くの公園の前を通過した時、思いも寄らぬ事態が百合子を襲った。


突然、何かに足を引っ掛けた百合子は、そのまま激しい勢いで前のめりに転倒した。

い、痛い。。

全身をもろにアスファルトに叩きつけられた百合子はしばらく動けなかった。
苦痛に呻きながら、後ろを振り返ると暗闇の中、地面から40~50cmのところに薄っすらと光る1本の筋が浮いているのが見えた。
どうやら誰かが道路上にワイヤーの様なものを張ったらしい。百合子はしばらく気持ちを落ち着かせた後、ゆっくりと手足を動かしてみた。両膝と右肘、そして右わき腹がかなり痛むが、幸い骨折はしていない様だった。

百合子はゆっくりと立ち上がると、今自分を転ばせたワイヤーを外しにかかった。早く家に帰って傷の手当てをしたいところだったが、このままこれを放置していては、第二の犠牲者が出るかもしれない。そんな事は、百合子の正義感が許さなかった。

ワイヤーをたどって道端まで行くと、電信柱に巻きつけられている事が分かった。手を怪我しない様に慎重にそれをほどく。そして、それを輪になる様にまとめながら、道の反対側に移動した。おそらく反対側は公園のフェンスにくくり付けられているに違いない。
百合子が確認すると、予想通りフェンスの穴にワイヤーが結ばれているのが確認できた。

全く、何て悪質な悪戯なのだろう。打ち所が悪ければ大怪我していたかもしれないのに。明日、先生に報告し、生徒会でも対応策を検討しなければ。

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