夢追い旅

夢人

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立ち位置

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 2日と置かないで、その記事は雑誌に出た。取締役の見せられたゲラ原稿の通りだ。ということは、新しい派閥が動き出したということだ。取締役はどの位置に身を置こうとしているのか。その位置と、周平の位置は非常に難しい関係になる。
 今回は、取締役全員が会議室に籠った。周平も待機として、別室で会議をした。周平の課内は女性と運転手を外すと、たかが6人と少ない。
「今度は国税ですか?」
「まだ分からない。最近派閥の動きは?」
「私が調べていますが、とくに大きな変動はないと思いますが?」
 加瀬が資料を覗きこんで言う。
「もともと、赤坂は私らには関係のないゾーンでしたので」
 若い一人が答える。
「関係していた部署は?」
「開発部は柳沢部長からはこちらには何も漏れてきません」
「経理部は?」
「赤坂資金にはノンタッチしていたと言います」
「この記事によると、かなり精密な投書の一部が、この雑誌社と国税にということになっている。内部のものしか考えられないとある」
 携帯のバイブが震える。ポケットから覗く。国崎からである。
「取敢えず、加瀬君はこの雑誌社に行ってくれ。それから残りは、最近で経理部、開発部を辞めたものがいないか調べてくれ」
 そう言うと、周平は屋上に一人で上がった。
「暴露記事が出るのを知っていたのでは?」
 どこまで知られているのか。
「まあいい。出所はそちらの監査役だ。轟が本人を追っている。監査役の身元を調査してくれ」
 課の留守番の女の子に、携帯を入れ監査役の経歴を調べたら連絡入れてもらうように頼んで、轟を追うことにした。どうも轟の動きが気になる。



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