上 下
319 / 389
『腸』――14日目

129.『夜の時間(4)』

しおりを挟む

**
 ――――AM00:25、晶の部屋

白百合 美海
「ぅぅ…………ぇっく…………」

道明寺 晶
「美海…………なぁ、美海……」

白百合 美海
「うぅ…………アキラ……約束、したじゃない」

道明寺 晶
「ん?」

白百合 美海
「…………『閖白えりか』じゃなくてっ、
 『白百合美海』としての人生をっ、一緒に、
 …………一緒に、歩んでくれるって……」

道明寺 晶
「うん…………」

白百合 美海
「…………あたしを『鳥籠』の中から出してくれたのは、アキラじゃないっ」

道明寺 晶
「…………なあ、美海」

白百合 美海
「アキラ…………」

道明寺 晶
「今でも覚えてる、お前と初めて会ったときのこと。
 一目惚れだった…………それに、思った。
 あー、俺、この子のために死ぬんだな、って」

白百合 美海
「……ど、して…………そんなこと言うの」

道明寺 晶
「俺が生まれた意味…………たぶん、それなんだよ。
 美海を助けること、鳥籠から出してやること。
 …………いつ如何なるときも、それが、俺の役目なんだ」

白百合 美海
「アキラ…………ねえ、アキラ…………」

道明寺 晶
「うん…………?」

白百合 美海
「…………普通の幸せなんて訪れないと思ってた。
 …………願っちゃいけないと思ってた……。
 でもあの日、アキラが『白百合美海を生きろ』って言ってくれて、変わったの。
 氷みたいだった、あたしの心が…………溶けていったの…………」

道明寺 晶
「うん…………」

白百合 美海
「だから、…………離れないで。
 あたしをそばに置いて。ずっと、ずっと」

道明寺 晶
「…………そばにいるよ。ずっと、ずっと。
 例え、どんな姿になろうとも。
 …………な、美海……」

白百合 美海
「…………アキラ」
(アキラは、少し皮肉げに微笑してから、あたしを抱き上げた。
 …………特徴的な、ニヒルな笑顔。あたしの大好きな笑顔。

 …………アキラはあたしを、そのままベッドに押し倒した)

白百合 美海
「アキラ…………」

道明寺 晶
「…………思い出作り」

白百合 美海
「…………アキラっ、アキラぁっ」
(そしてあたしは、アキラに抱かれた。
 いつも優しかったアキラ。でも今日は、すこし、荒々しかった。
 自分を刻み込みように…………あたしのそばにいるよって、教え込むみたいに。
 …………あたしの中に、熱いものを放った……)
**





【残り:16人】
しおりを挟む

処理中です...