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『腸』――16日目

174.『夜の時間(6)』

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白百合 美海
「……あたしね、今日は、サキちゃんを占ったってことにしようと思うの。
 …………サキちゃん、裏切り者なのよね?」

千景 勝平
「ああ。間違いないな。
 …………俺を村人だと言った。適当な嘘を言ってやがる」

白百合 美海
「…………小田切くんに確認したいんだけど、
 村人は…………嘘を吐く理由はないわよね?」

小田切 冬司
「…………普通だったらね。
 ただ、和歌野さんが本当に裏切り者なのか、懸念してることがあるんだ」

白百合 美海
「…………なぁに?」

小田切 冬司
「本当はただの村人なのに、俺たちをあぶり出すために、嘘を吐いてるんじゃないかってこと」

千景 勝平
「…………どういうことだ」

小田切 冬司
「例えばだけど…………本当はただの村人なのに嘘を吐いて、
 俺たち人狼に裏切り者だと思わせるのが目的だとしたら。
 …………俺たちは、接触を試みるよね? 連携するために。
 …………でもそれが、もし、もう一人の共有者だったりしたら」

千景 勝平
「…………まずいな」

白百合 美海
「…………そうね」

小田切 冬司
「普通の人狼ゲームではありえないことなんだけど、
 …………これは、本物の殺人ゲームだからね。
 話ができる時間も多いし、普通通りにいくわけがない、絶対に」

千景 勝平
「普通通りにいかないから…………犯人はこんなことを俺たちにさせてるんだろうしな」

小田切 冬司
「そうだね」

白百合 美海
「…………それじゃあ、サキちゃんとの連携は避けた方がいいのね」

小田切 冬司
「うん。アキラは連携しろって言ってたけど…………、
 現実問題、難しいかな」

白百合 美海
「…………味方になれば心強いけど、ね」

小田切 冬司
「そうだね。
 …………白百合さんはなんで、和歌野さんを占ったって言おうと思うの?」

白百合 美海
「…………自白させるため、かな。
 …………嘘を吐いてるから、人狼だと思って占ったけど、結果は村人だったって。
 あなた…………裏切り者なんじゃないの? って」

千景 勝平
「直接語りかけるってことか」

白百合 美海
「そう。…………それに、あたしに対する信憑性も増すわ。
 …………そうよね?」

小田切 冬司
「うん。嘘を言ってるようには見えないと思う」

白百合 美海
「……ありがとう。
 小田切くんにそう言って貰えると心強いわ」

千景 勝平
「…………とりあえず方向性としては、
 和歌野が裏切り者と確定するまで接触はしない、ってことだな」

小田切 冬司
「それがいいと思う。
 …………ただでさえ、こっちが不利なんだし」

白百合 美海
「え?」

千景 勝平
「どういうことだ?」

小田切 冬司
「単純に考えて、4人も村人で確定しちゃってるんだよ?
 しかも朔也は共有者。…………共有者は厄介だよ。あんな一手を仕掛けてくるなんて。
 それに、白百合さんが上手く振る舞ってくれたから、空太も村人だと信じてる人は多いと思う。
 そうすると…………俺か勝平くんが処刑されるリスクが高い」

千景 勝平
「…………俺は今日、3票も集めちまったしな」

小田切 冬司
「それを言ったら俺だって、
 楽しそうだのなんだのって勝平くんにも直斗くんにも難癖つけられて大変だったんだから」

千景 勝平
「…………悪かったよ」

小田切 冬司
「…………いいよ、過ぎたことだし」

白百合 美海
「…………ねえ、二人とも」

小田切 冬司
「うん?」

千景 勝平
「どうした?」

白百合 美海
「…………そろそろ、1時になるわ」

千景 勝平
「…………誰にしよう」

小田切 冬司
「…………筒井くんにしよう。
 彼はリーダーシップがあるから、厄介だ」

千景 勝平
「…………わかった」

白百合 美海
「……………………」

小田切 冬司
「その前に…………白百合さん、お願いがあるんだけど」

白百合 美海
「…………なぁに?」

小田切 冬司
「俺…………今日、楽しそうだの言われて散々だったのね。
 だから、明日の話し合いで、俺のこと占うって言ってほしいんだ」

白百合 美海
「いいけど…………」

小田切 冬司
「いいよって言いやすい雰囲気には俺がするから。
 …………よろしくね」

白百合 美海
「うん…………」

千景 勝平
「…………じゃ、行くぞ」



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