19才の夏 From1989

sky-high

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テメーみたいにフラフラできねぇんだよ!

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そんな思いを知ってか知らずか、康司はしょっちゅう僕のところへ来る。

しかも毎回女が違う。昨日は女子高生、今日はOLといった感じで僕に見せつけるかのようにだ。

「何しに来たんだよ。」

「今から遊びに行かねえ?」

「オレは明日も仕事だよ。お前みたいにフラフラしてらんねーんだよ!」

アホか!明日も仕事で残業なのに、お前みたいに自由気ままに出来ねえんだよ!

「んだよ、つまんねーな、最近付き合い悪いぞ。」

この一言でプツンと糸が切れた。

「何だって?あぁ?テメーみたいに仕事もしねえでフラフラ遊んでる身分じゃねぇんだよ!」

僕は康司の胸ぐらを掴んだ。

「あぁ、何だテメー、やんのかコラァ!」

康司も応戦した。

「何やってのよ、二人とも!こんな玄関で大声出さないでよ!」

姉が割って入ってきた。

「つまんない事で言い争いしないでよ、みっともない!」

僕は部屋に入り、康司は彼女を連れて外に出た。

ガチャっとドアが開き、姉が入ってきた。

「何やってんのよ?」

「何でもねえよ。」

「じゃあ何でケンカなんてしたのよ?」

「別に何でもねえって!」

「ヤッちゃんが羨ましいんでしょ?」

即座に見抜かれていた。

ああやって日替わりで女を取っ替え引っ替えする康司に嫉妬していた。

「アイツもまぁ毎日違う子連れてよくやるよ、ホントに」

姉も康司の女ったらしぶりには呆れていた。

「アンタ、ヤッちゃんに嫉妬してんの?」

「そんなんじゃねーよ」

姉には全部バレていた。

「いいから早く出てけよ!」

僕は姉を追い出し、レスポールを手にした。

上手く弾けないけど、必死にコードを押さえながらギターを弾いた。

困らせるつもりはないけど
またワガママな人ねと言われた
上手くやろうとする気もないけど
ぶち壊しにしようとは思わない

ザ プライベーツの気まぐれロメオを聴きながら必死でギターを弾いた。

何だかやってる事がアホらしくなってきた。

ギターを弾いてるうちに、康司の事なんて、どうでもいいと思えてきた。

そうだよ、オレはあんな真似は出来ない。
オレは康司になれないけど、康司はオレになれない。

そんな事を思うと、アイツの事はどうでもよく思えてきた。

ひとしきりギターを弾き、その日はそのまま寝た。
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