19才の夏 From1989

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過ち

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ライオンだって満腹な時はシマウマが通っても襲わない。

僕だってムラムラしてない時に女の裸を見ても、ヤリたいなんて思わない。

そのはずだった。

でも、実際はセックスしてしまった。

人生の中で1番過ちを犯した日に思えてきた。

明日可南子に何て顔すればいいんだろうか?

そればっかり考えていた。

フツーに接しようと思っても、フツーってどんな感じだっけ?と思うぐらい、フツーに接する自信がない。

いっそ休もうか、とも思ったのだが、休んだら余計に会社に行きにくくなるだけだ。

散々悩んだ結果、会社に行くことにした。

今日は可南子に会いたくない。
会って何て挨拶すればいいんだろうか?
憂鬱と罪悪感の入り交じった複雑な心境だった。

会社に着いて直ぐ様机に座り、仕事を始めた。
何かしてないと落ち着かない。

そして足音が近づいてきた。

「小野くん、おはよう。」

可南子だった。

可南子はいつも通りの派手目なメイクとソバージュヘア、顔は少し笑みを浮かべながら僕に挨拶してきた。

「あ、おはようございます。」

僕も悟られように挨拶した。

その日は可南子と接する機会は無かった。

しばらくこういう日が続いて欲しいと思った。

しかし、翌日の昼間の食堂で可南子は僕の隣に座ってきた。

「小野くん、ありがとうね。」

「え、あ、あの、そうだ、この前はご馳走でした。」

僕は夕食をご馳走してもらった礼を言うのを忘れていた。

「小野くん、いつでもいいからまた遊びに来てね。」

可南子は小声で僕に囁いた。

「はぁ、はい。」

また可南子の家に行ったら過ちを犯しそうだ。

ここは適当な相づちだけ打っておけばいいやと思った。

「またヨロシクね。」

ヨロシクって何だ?セックスか?
ふとあの日を思いだし、下半身が膨れ上がってしまった。

何やってんだ、会社の食堂で!
でも、若いからすぐに勃ってしまう。

しばらく席から離れる事が出来なかった。

いっそ消えてしまいたい、もう会社なんて無くなればいいんだ!
そんなバカな事を考え、下半身が正常になるまで僕は座っていた。

罪悪感と性欲が交互に入れ替わる。
羞恥プレイみたいで、僕に投げ掛ける可南子の視線が辛かった。


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