19才の夏 From1989

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Miss Brand-New Dayな女

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どのくらい沈黙が続いただろうか。

僕はテレビを観て、可南子は洗濯をしたり、干してあった洗濯物を畳んだりしていた。

「貴ちゃん。」

可南子が口を開いた。

「はい。」

「だからここでは敬語止めてよ。何回言っても敬語になるんだから。」

「あ、はぁ、申し訳ない。」

「今日さ、する?」

「えっと、その。どうしましょ?」

「アッハハハハ!もしアタシがイヤだって言ったら?」

「そりゃイヤならヤラないけど。」

「…こんな女に付き合ってくれてありがとうね。」

「え、そんな事はないけど。」

「そうだ、サザンのMiss Brand-New Dayって歌知ってる?」

サザンオールスターズのミス ブランニューデイ。
1984年にリリースした曲だ。

勿論、僕は知っている。

「もう何年か前の歌だけど一応は知ってるけど。」

「あの歌覚えている?」

覚えてないワケがない。

僕もこの歌を聞いて自分に当てはまる部分があるからだ。僕は口ずさんだ。

 
夢に見る姿の良さと美形の Blue Jean 
身体と欲でエリ好みのラプソディー 

OhOh Miss Brand-New Day みな同じそぶり
 Oh Miss Brand-New Way 誰かと似た身なり

意味のない流行の言葉と見栄の Illusion
 教えられたままのしぐさに酔ってる 
OhOh Miss Brand-New Day
月並みを愛し
Oh Miss Brand-New Way
お出かけの前に

終わらない彼と寝てるNight Time

「そこよ。」

ん?そこ?

「その部分なの。」

「終わらない彼と寝てるってとこ?」

終わらない彼って、昔の彼の事じゃ…

「そう。」

どういう事だ?

「その歌詞の通り、まだ彼と終わってないのよね。」

「彼って、オレに似てるっていう彼?」

「そう、その彼。」

「じゃあ、まだその彼と付き合ってるっていう事?」

「もうその彼はどこにいるのか解らないけどね。」

終わってない?どこにいるのか解らない?何だ一体?

僕は何が何だかサッパリ理解出来ない。

「アタシの中では、その終らない彼っていうのが貴ちゃんの事なの。」

オレ?どういう事だ、ますます解らない。

「意味がよく解んないんだけど。」

「んー、貴ちゃん、彼に似てるでしょ?だから彼を追いかけてると、貴ちゃんになるの。」

「てことは、オレは単に彼氏の代わりってこと?」

「それは違う、彼イコール貴ちゃんじゃないわ。」

何だかわからん!

「彼の延長が貴ちゃんなの。」

延長…?

ていうか、その彼氏の分身みたいなもんなのか。

「貴ちゃんは迷惑だったよね、アタシに振り回されて。」

「んー、あんまりそんな事は考えた事なかったけど。」

これはウソである。
こういう関係を止めなきゃって思っていたから、徐々に可南子の誘いを断っていた。

「そうなの?何か貴ちゃんてたまに気まぐれなとこあるからね~。」

まただ…
【気まぐれ】【ワガママ】
あの曲がリフレインする。

ザ プライベーツの気まぐれロメオだ。

僕は上手くやるつもりも、ぶっ壊すつもりもない。

ただ単に上手い表現が出来ないだけだ。

それを伝えるのは難しいんだけど。


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