19才の夏 From1989

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危なっかしい

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美樹とはあれ以来、連絡をしなかった。
連絡したかったのだが、何を話せばいいのか解らなかった。

美樹からも連絡は来なかった。

結局、それまでの関係だったんだと割り切るよう、自分に言い聞かせた。

だけど、美樹から貰った写真は捨てられずに、大事に保管していた。

女々しいとは男の為にある言葉なんだと身をもって知った。

僕はまた、可南子の家に頻繁に行くようになった。

美樹と別れた翌週の土曜は可南子の家に出向いた。

いつもだったら可南子が僕を誘うのだが、この時ばかりは僕が可南子を誘った。

「あの、土曜日また行ってもいいですか?」

「えーっ、珍しい、小野くんから誘うなんて。何かあったのか、おい~?」

美樹の代わりと言ったら大変失礼だが、美樹の事を忘れるには、可南子と会った方がいいと勝手に解釈していた。

やっぱり僕は美樹の事が好きだったんだと思う。

だから忘れる為に可南子を利用した。

やっぱり僕はサイテーだ。

解っているのだが、それでも可南子と会って美樹を忘れようとした。

いつものように可南子は部屋着姿で夕飯を作って僕を待ってくれている。

「今日は久しぶりにカレーにしたよ。早く食べよう!」

「いつもは料理ってしないんでしょ?」

「何で?そりゃ1人だから作ってもねぇー、だからテキトーなもん食べてるかなぁ。」

勿体ないなぁ、こんなに料理上手なのに。

「そうだ、今まで生きてきて、ウソや偽りの無い生き方したって言う自信ある?」

何となく聞いてみたかった。

「どうしたの、いきなり?ウソつかないで生きてきた人っているのかしら?逆に聞くけど。」


やっぱりみんなそうなのか。

「ねぇ、何かあったんでしょ?なのがあったの?」

聞くんじゃなかったかな。

「いや、特に無いけど。」

「いや、何かあったからアタシにこういう事聞いてきたんでしょ?正直に言いなさい。」

「…いや、親とケンカして。」

咄嗟に親子ゲンカの事が思いつき、ウソをついた。

「どうしたの、一体?」

「うん、一人暮らししたいからそれでちょっとケンカして。」

「で、お父さんやお母さんに反対されたの?」

「うん、まぁそんなとこかな。」

美樹の事だなんてとても言えない。

「貴ちゃんはまだ未成年だからじゃない?」

「でももう働いているし。」

「それにしたって親は心配なのよ。アタシもまだ一人暮らしするには早いと思うんだけどなぁ。」

「そうなのかなぁ。」

「そうよ、特に貴ちゃんは危なっかしいから余計不安よ。」

「危なっかしい?」

「貴ちゃん見てると、大丈夫かなぁって思っちゃうもん。まぁそれが男の子なのかなぁって言えばそうなのかも知れないけど。」

「どこら辺が危なっかしいって思うの?」

「何でもかんでもすぐに1人でやろうとするでしょ?後先考えないでやるから、危なっかしくてほっとけないのよ。」

カレーを食べる手を止めて僕は可南子の話に耳を傾けた。

気まぐれかワガママかよく解らないけど、僕の性格を案じてるのだろう。

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