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首都崩壊のあの日のこと
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蜘蛛の糸を出す神の使いを科学技術だと言った軍の佐官 高垣。俺たちの知らない何かを知っている。そう思った俺の追及に高垣が語った話は、首都が崩壊したあの日に、軍の管轄下の研究所で行われていた実験についてと、その後の軍による包囲についてだった。
軍の管轄下の研究所で行われていた実験。
その実験が行われた研究所の場所こそが、爆心地と呼ばれる場所だった。つまり、この首都崩壊と実験には密接な関係があると考えられているらしい。そして、そこで行われていた実験は単に人をコピーする実験で、そのリーダーは俺の父親だった。
人をコピーする技術。
この話は俺としては父親から聞いて知っていたが、これに手を加える事で、神の使いと同じような特別な力を持った人間が誕生すると言う高垣からの話は知らなかった。
高垣の話では、コピーする人、言わばオリジナルの人間から作成したiPS細胞の遺伝子に手を加え、特殊な能力を植え付けてから培養し、人体一体分以上のiPS細胞を用意する。そのiPS細胞をセル3Dプリンターと言う特殊な細胞を射出する3Dプリンターで、特定の細胞に分化させつつ射出し、人間のコピーを作り上げていく事で、人を超えた能力を有した人を誕生させれると言う事だった。
ただ、すでに開発済みの特殊な能力として、どんな能力があるのか、あの日特別な力を持ったコピーを作成しようとしていたのか、と言った詳細までは高垣は把握していなかった。
それに、あの日の実験で何か特別な能力を付加したコピー実験が行われたとしても、ただの人のコピーを一体作り上げる程度の事であり、このような大規模な事故を起こす訳はなく、何か別の実験を加えた可能性があると、考えられているらしかった。
その根拠の一つが、首都圏崩壊さ中に実験のサブリーダー格の高山から軍にかかってきた救援を求める電話だったらしい。その電話の中で、高山は水野が裏切りとんでもない事をしでかしたと言ったらしく、そのとんでもない事が首都圏崩壊につながったと軍内部では思われているらしいかったが、そのとんでもない事とはなんなのか、高山はどうなったのかなどは分かっていないらしい。
そして、この区域を封鎖している理由。
爆心地の位置が軍の管轄下の研究所だけに、万が一、軍の実験がもたらした崩壊だった場合、その証拠が流出するのを抑えるためだったらしいが、すぐにこの区域の中に存在する人間の形をした生き物が拡散するのを防ぐために変わり、今は教会の勢力が流出するのを防ぐことが目的になっているとの事だった。
未だ軍も、あの生き物たちが何なのか、分かっておらず、伝染病的な可能性も当初は疑ったらしいが、今はその可能性は低いらしかった。
「あの日の情報の中で、この子の事を知らないか?」
高垣の話を聞き終えた俺はあの写真を差し出しながら、高垣に凛の事をたずねた。
「この子の事は知らない。
ただ状況から言って、あの日の実験と関係があった可能性は高いと思うが」
「とりあえず、その言葉、信じておくよ。
それに分かった気がする。
あんたたちが、俺の父親を疑っていた理由もな」
確かにこれまでの話を聞けば、俺の父親が疑われる理由は十分ある。が、俺としては信じられやしない。そして、高垣だけでなく、大久保もそんなことを言った事があった。
「大久保さん。あなたも、そんな事言った事があったよね?
大久保さんも、この事知っていたの?」
「あ、あ、ああ。少しな」
ちょっと、俺の質問に困った感じで答えた。
うさん臭すぎる。
父親のただの友達と言うのじゃないかも知れない。
ちょっと俺の眉間に皺がよった。
「確か、以前殺された司祭に、教祖の名前にとして、俺の苗字とさっき出て来た高山と金山と言うのを上げてたよね?
金山って誰?
俺たちに何か隠してるよね?」
はっきり言って、不信さ全開の詰問口調。俺的には、もうここで大久保と別れても特に困る事は無い。そんな気持ちだ。
「ねぇ。お兄ちゃん」
あかねが俺の服の裾をぐい、ぐいっと二回ほど引っ張った。ちょっと来いと言いたい感じなので、大久保達の前から離れる事にした。少し離れた場所まで俺を連れて行くと、あかねが耳元で小声で話し始めた。
「大久保さんがなんだっていいじゃない。
まだ、使えると思うよ。使えるものは使わないと」
ああ。もっと、耳元で囁いて! と言うのは置いておいて。あかねの方が大人じゃないか。
「分かってるよ」
そう言った時だった。
遠くの方、コロニーの中ではなく、外と思しきところから砲撃音のような音が聞こえてきた。
遠くから聞こえてきた爆発のような音。
耳を澄ましてみる。同じような爆発のような音が再び聞こえてきた。
「なんだ?」
「あれは戦車砲の音だ」
高垣が言った。
戦車砲は鳴りやまない。
「どこかで戦いが始まったらしい。
行かなければ」
高垣はどこかで起こったであろう戦車部隊の戦いに、向かう事を決めた。基本、軍の戦いは俺には関係無いとは言え、他にもいるであろう神の使いの力を見ておきたい事や、いずれは決裂するかも知れないとしても、教会の敵と言う点では、今は俺と軍は一蓮托生だ。
「俺たちも行こう、あかね」
そう言って、俺たちはコロニーを飛び出して、砲撃音がする方向を目指した。
軍の管轄下の研究所で行われていた実験。
その実験が行われた研究所の場所こそが、爆心地と呼ばれる場所だった。つまり、この首都崩壊と実験には密接な関係があると考えられているらしい。そして、そこで行われていた実験は単に人をコピーする実験で、そのリーダーは俺の父親だった。
人をコピーする技術。
この話は俺としては父親から聞いて知っていたが、これに手を加える事で、神の使いと同じような特別な力を持った人間が誕生すると言う高垣からの話は知らなかった。
高垣の話では、コピーする人、言わばオリジナルの人間から作成したiPS細胞の遺伝子に手を加え、特殊な能力を植え付けてから培養し、人体一体分以上のiPS細胞を用意する。そのiPS細胞をセル3Dプリンターと言う特殊な細胞を射出する3Dプリンターで、特定の細胞に分化させつつ射出し、人間のコピーを作り上げていく事で、人を超えた能力を有した人を誕生させれると言う事だった。
ただ、すでに開発済みの特殊な能力として、どんな能力があるのか、あの日特別な力を持ったコピーを作成しようとしていたのか、と言った詳細までは高垣は把握していなかった。
それに、あの日の実験で何か特別な能力を付加したコピー実験が行われたとしても、ただの人のコピーを一体作り上げる程度の事であり、このような大規模な事故を起こす訳はなく、何か別の実験を加えた可能性があると、考えられているらしかった。
その根拠の一つが、首都圏崩壊さ中に実験のサブリーダー格の高山から軍にかかってきた救援を求める電話だったらしい。その電話の中で、高山は水野が裏切りとんでもない事をしでかしたと言ったらしく、そのとんでもない事が首都圏崩壊につながったと軍内部では思われているらしいかったが、そのとんでもない事とはなんなのか、高山はどうなったのかなどは分かっていないらしい。
そして、この区域を封鎖している理由。
爆心地の位置が軍の管轄下の研究所だけに、万が一、軍の実験がもたらした崩壊だった場合、その証拠が流出するのを抑えるためだったらしいが、すぐにこの区域の中に存在する人間の形をした生き物が拡散するのを防ぐために変わり、今は教会の勢力が流出するのを防ぐことが目的になっているとの事だった。
未だ軍も、あの生き物たちが何なのか、分かっておらず、伝染病的な可能性も当初は疑ったらしいが、今はその可能性は低いらしかった。
「あの日の情報の中で、この子の事を知らないか?」
高垣の話を聞き終えた俺はあの写真を差し出しながら、高垣に凛の事をたずねた。
「この子の事は知らない。
ただ状況から言って、あの日の実験と関係があった可能性は高いと思うが」
「とりあえず、その言葉、信じておくよ。
それに分かった気がする。
あんたたちが、俺の父親を疑っていた理由もな」
確かにこれまでの話を聞けば、俺の父親が疑われる理由は十分ある。が、俺としては信じられやしない。そして、高垣だけでなく、大久保もそんなことを言った事があった。
「大久保さん。あなたも、そんな事言った事があったよね?
大久保さんも、この事知っていたの?」
「あ、あ、ああ。少しな」
ちょっと、俺の質問に困った感じで答えた。
うさん臭すぎる。
父親のただの友達と言うのじゃないかも知れない。
ちょっと俺の眉間に皺がよった。
「確か、以前殺された司祭に、教祖の名前にとして、俺の苗字とさっき出て来た高山と金山と言うのを上げてたよね?
金山って誰?
俺たちに何か隠してるよね?」
はっきり言って、不信さ全開の詰問口調。俺的には、もうここで大久保と別れても特に困る事は無い。そんな気持ちだ。
「ねぇ。お兄ちゃん」
あかねが俺の服の裾をぐい、ぐいっと二回ほど引っ張った。ちょっと来いと言いたい感じなので、大久保達の前から離れる事にした。少し離れた場所まで俺を連れて行くと、あかねが耳元で小声で話し始めた。
「大久保さんがなんだっていいじゃない。
まだ、使えると思うよ。使えるものは使わないと」
ああ。もっと、耳元で囁いて! と言うのは置いておいて。あかねの方が大人じゃないか。
「分かってるよ」
そう言った時だった。
遠くの方、コロニーの中ではなく、外と思しきところから砲撃音のような音が聞こえてきた。
遠くから聞こえてきた爆発のような音。
耳を澄ましてみる。同じような爆発のような音が再び聞こえてきた。
「なんだ?」
「あれは戦車砲の音だ」
高垣が言った。
戦車砲は鳴りやまない。
「どこかで戦いが始まったらしい。
行かなければ」
高垣はどこかで起こったであろう戦車部隊の戦いに、向かう事を決めた。基本、軍の戦いは俺には関係無いとは言え、他にもいるであろう神の使いの力を見ておきたい事や、いずれは決裂するかも知れないとしても、教会の敵と言う点では、今は俺と軍は一蓮托生だ。
「俺たちも行こう、あかね」
そう言って、俺たちはコロニーを飛び出して、砲撃音がする方向を目指した。
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