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「……綺麗」
百年以上封印されていた一本の妖刀――《彩蝕》。
月夜に妖しく輝くその刀を手にした者は、
誰もが異常な執着に囚われ、壮絶な末路を迎えたという。
ゆえに人々は、《彩蝕》を持ち主を破滅させる呪刀と呼んだ。
けれど。
彩蝕は、人間を殺したいわけではない。
ただ、愛した持ち主に。
自分だけを愛してほしいだけだった。
そして現代。
人には話せない仕事を生業とする一人の青年が、
封印されていたはずの彩蝕と出会う。
他の武器を褒めれば拗ねる。
置いて出掛ければ機嫌を損ねる。
手入れを怠れば許さない。
けれど「お前が一番」と言えば、すぐに機嫌を直す。
そんな異常なほど嫉妬深い妖刀を前にしても、
青年は恐れるどころか、
「はいはい」
「悪かったって」
「今日も綺麗だな」
と、当たり前のように受け入れてしまう。
歴代の持ち主たちは、
彩蝕を恐れ、逃げようとし、そして壊れていった。
ならば。
最初から逃げようとしない人間を、
彩蝕が愛してしまったら――?
これは、
愛した人間を狂わせる妖刀と、
そんな妖刀との暮らしに少しずつ慣れ、
いつしか刀のない日常の方に違和感を覚え始める青年の物語。
彼が彩蝕を愛しているのか。
それとも既に、
《愛着侵蝕》に呑まれているのか。
その答えは――
青年にも、彩蝕にも分からない。
登録日 2026.09.30
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