鬼退治伝説

 本編「信濃争乱」についての雑感です、

「千常の乱」の際、信濃守は平維茂と思われます。
 設定では、實頼の依頼により、参議であった兼通が、調停のため密かに信濃に下向します。
 これは、「乱」として報告された千常の乱の終息が、「秀郷の子らに説諭を与えた」の一言で済まされてしまっていること。乱を起こしていながら、千常が間もなく鎮守府将軍に任じられていること。
 そんな馬鹿なと思うのが普通ですよね。
 何らかの裏取引が有って千常の言い分を飲む形で収束するしかなかったと考えるのが自然です。しかし、朝廷はその事実をひた隠しにする必要があったと考えた訳です。
 一方、強硬論の伊尹、兼家は飽くまで千常、千方を殺して収束させようとして満仲を派遣した。
 そう書きましたが、思いつきだけでは無く、この時期に満仲が信濃に行っていたと考えられる傍証があるのです。
 鬼退治と言うと息子の頼光が有名ですが、満仲にも鬼退治の話が有るのです。
 坂田金時の父・金末を引き連れて戸隠山の鬼神を征伐したとされるのが、この時期のことと思われ、
『鬼神が金末を取ておさえるところを満仲が走りよって鬼神の首を水もたまらず打ち落とし、金末を引き起して鬼神の首を持たせ、都をさして上っていく。満仲の御手柄天晴れ、並みの男の出来ることではないと皆して感心しない者はなかったのだ』
 こう結ばれているところを見ると、源氏の祖を称えて鎌倉時代に作られた逸話と思われ、「鬼切の太刀」の伝説に繋がって行きます。
 満仲はこの時期に信濃に居て、誰かと争ったのではないかと推測される理由です。
 平維茂が信濃守の時のこととされる「紅葉狩」の伝説も鬼退治なのです。
『紅葉伝説は、長野県の戸隠、鬼無里(現、長野県長野市)、別所温泉などに伝わる鬼女にまつわる伝説。平維茂が鬼女・紅葉と戦い、討ち捕る話』
 因みに、「紅葉」とは満仲の父・六孫王・経基の局だったと言うことで念が入っています。
 何れにしろ、清和源氏は鬼退治が好きなようで、この時期に信濃守だった平維茂の伝説にも影響を与えたのではないでしょうか。
「鬼」とは千常を意識してのことで、実際には思うように決着出来なかったことの憂さ晴らしとして作られた伝承ではないかと疑ってしまいます。
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登録日 2021.05.25 20:47

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