夢=無王吽

夢=無王吽

『むもん』と読みます。

さようなら。

ノラネコまーが旅立ちました。

最期まで、
一度も触らせてもらえなかったですが、
びろーんとのびきった遺体は軽く、
肋骨が掌に当たりました。
少し力をこめたらポキポキと折れそうな、
弱々しく、乾いた感触でした。

毛はボサボサで、いかにも老猫です。

白目をむき、口はだらんと開き、
舌が出ています。

ダンボールのひつぎにおさめられ、
明日、火葬されます。

ごはん、買ったばかりだったのになぁ。

今朝、父の呼びかけに小さく応えたのが、
最後の挨拶だったそうです。

どうやって入り込んだのか、
まー用に用意された、
厳重に寒気を防ぐ密閉状態の小箱の裏で、
隠れるように亡くなっていました。

ぼくは仕事で不在でしたが、
最後の晩も、
ちゃんとゴハンは食べたそうです。

湯たんぽであたためられた寝室の小箱の裏で、
ひっそりと孤独に、
一族最後の一匹が死にました。

しばらくは、
ゴハンあげないと、とか、
寝床をあたためてあげないと、とか、
今までのクセが抜けないだろうなぁ。

キレイ好きで小さくて、
弱くて用心深くて、ワガママで、
最後まで甘えん坊だったまーの、
魂の抜けたスキだらけの姿。

不思議と悲しくはなく、
病気で苦しんだり、
これ以上、弱っていく前に、
ゴハンを食べてから亡くなったのは、
ある意味、
穏やかな死に様だったのではないかなと、
奇妙な安堵を覚えました。

もういないのはもちろん寂しいですが、
毛色が同じな黒白で片目のお父さんと、
そっくりのお兄さんと、
人懐っこい茶トラの旦那のララ。
みんなのところに行けたのなら、
そのほうがいいかなと。

まぁ、独りぼっちになってから、
けっこう頑張ったなぁと。
チビのくせに。

弱っちいまーを、
ぼくでは護りきれないので、
家族や旦那に囲まれて、
今頃はぼくに対してより、
もっと甘えた、
安心した声で鳴いているでしょう。

耳をすますと、
なんとなくまだ鳴き声が聴こえる気がしますが、
これは生前からあったカンチガイなので、
思い出のひとつとして、
自然と忘れるまで錯覚していこうと思います。

さようなら、まー。

うまく接してあげられなくて、
ごめんよ。

また会おう。

あ、あれ?
なんか、あれ?
悲しくないのに、変だな。

これは、なんだ。手向けかな。

かわいかったしなぁ。
まあ、少しくらい、いいか。
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登録日 2021.11.27 15:10

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