『マッカ＝ニナール・テレクサの日記』には、
意図的な違和感が仕込まれています。

そのなかの、
ストーリー上関係のないものに、
『メール』の存在があります。

スマホでやりとりをしているのに、
ラインじゃなく、メール？　と。

本作の舞台は、近未来世界です。

シマグニは独立国ではなく属国で、
南北を他国に実効支配されており、
憲法もガッシュウホンゴクのものに、
変更されています。

その時間軸には、
ラインがあるのか？
あったとして、存続しているのか？

スマホは形を変えて存続していても、
ラインはインフラになっているのか？

わかりません。

物語上の理由とは別に、
メールは電話と同等の公共のもの、
ラインは一企業の商売という、
個人的な感覚もありました。

ライン的な、それに近い便利さを持つ、
そのなにかを、
メールと、呼称している可能性もあります。

また、ラインのあのやりとりの感じが、
ロマコメとハードボイルドの交じる、
古きよき映画へのオマージュをこめた、
ロマコメ学園ホラーである本作には、
邪魔だなと考えたのもあります。

あまりにも『現代風』になってしまい、
逆に近未来の退廃的かつ進歩的な、
荒々しい世界観より、
『今』を描いているように、
錯覚しやすくなるといいますか。

あと、他の作品との時間軸共有設定も、
理由のひとつです。

裏設定ですが、
この時代、すでにセレブたちは、
会社を売却し、
地下世界へと、事業と投資の向きを、
変更しつつあります。
地下国家建造が一部、
すでに実施されている可能性もあります。

公共サービスも一部、
様変わりしていると思われ、
現代より進んでいるものも、
退化しているものもあると思われます。

もしかしたらスマホ機能も、
簡易化されているのかもしれません。

あと、銃規制の緩和により、
ラインの問題点のひとつである、
集団で揉めやすいというところ、
また、誰かをスケープゴートにしやすい、
という暗部が表面化し、
発砲事件や銃による自殺などが多発して、
日本独自の自粛ムードを醸したとも、
推測できます。

これが本作に仕込まれた、
あまたある違和感のひとつの正体です。