笹井ひなか

笹井ひなか

私達を処刑しても無駄ですよ  2

お兄様は誰とも恋愛をすることができないらしい。だからこそ私が家を継がなくてはならなかった。そんなお兄様の苦悩は私にはわからない。私は廊下の隅で一人様子を伺う。アンアが俯くと小さく を吐いた。

「...クロウさん、あたし、わかってますから! クロウさんがあたしのこと苦 手だってわかってたから。だから、気にしないでください。あたしが勝手 に憧れてるだけなので!」

「うん………ごめんね、アンナ。ありがとう」

アンナは野菜を手渡すと帰って行った。それと入れ違いに立派な馬車が我 が家に向かってくる。こんな片田舎に似つかわしくない馬車だ。その馬車 の家紋に見覚えがあり私はため息を付いた。

本当に腹立たしい...。

「やぁ、クロウ!! さっきすれ違った子から野菜でももらったのかい?いつも見かける子だよね」

「王子……………こんな片田舎になんの御用でしょう?」

「ジュリアから返事がないから心配してな」

この方は王国滅亡後に吸収した元隣国の王家のものだ。確か第2王子。

「妹は必要ありませんと言ってましたが?それに王子が供をつけず華美な馬車で来るのはいかがかと?」

「そういうわけにもいかないだろ? 君達は神の子だ。その力を使い方次第 でどうとでもなる。現に国が滅んだわけだしな。供をつけないのは君達のためだ」

「それでもあなたがたに手を貸すつもりは有りません。おかえりいただいて」

「やぁ、ジュリア!」

王子は大袈裟なほど両手を広げ私に歩み寄ろうとする。パアンと大きな音を立てて王子は弾かれた。一種の結界だ。

「おかえりください」

私が睨みつけると王子はため息を付いてヘラヘラとした笑みを浮かべた。

「いいや、残念だが私は帰らないよ。ここに野宿する。そのつもりで野営セット用意したんだ」

お兄様が天を仰いだ。この男は本当に面倒だ。






登録日 2024.03.27 17:19

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2024.03.27 20:20
笹井ひなか
笹井ひなか

私はお兄様の服の裾を掴み家の中へ入るよう促した。王子を完全に無視しようと思ったのだ。

「ジュリア、ひどいな?だけど俺は諦めないよ〜」

私は本当にあの王子が苦手なのだ。家に入るとお兄様はソファに座った。

「ジュリアが諦めるしかないんじゃないか?」

「嫌です。なぜ私が諦めなければならないんです?」

窓から見ると王子は立ったまま我が家を見ている。その顔はにこにこと楽しそうだ。はっきり言うが迷惑だ。邪魔だ。こんな片田舎で森の奥にある我が家に王家の馬車など邪魔でしかない。

「どうしたものか?」

「お兄様、多分リルが来ますわ」

外が一瞬暗くなる。窓から様子を見ると王子が慌てていた。御者さんも馬車をなんとかしようとするが遅い。我が家の半分くらい大きさはあるリルが着地した。私は家を飛び出しリルに駆け寄る。

「ピ〜ィ!ピ〜ィ!!」

「リル…!」

馬車も王子も何事も無かった。リルが気を使ったのだろう。私はリルに抱きつく。本当に大きな鳥でとても美しく可愛い。

「リル、今の姿も素敵だけど小さくなれる?」

「ピ!!」

シューと音を立ててリルが小さくなる私の肩に乗るくらいだ。リルを連れて家へ入ると王子が騒ぎ立てた。

「ジュリア!!その鳥は一体…?初めて見たぞ!?」

「ピィ?」

私は王子を一目見るも見なかったことにしてリルの感情を読む。リルはお父様達からの連絡を取るために働いてくれている。賢く美しい鳥。

「……そう……お父様はそうおっしゃるのね?」

私は家へ入る。当然王子は無視。私は頭を抱えお兄様にお父様の言葉を伝える。





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