八木山

八木山

たかがドコモのビニール袋だけどさ

さっき私は、家系ラーメン屋から帰ってきた。
その時のことを書こうと思う。

右、2つ隣に、客が座った。
ポロシャツとハーフパンツを着た、細身で髪の豊かな、肌の浅黒い男だった。

(コメントに続きます)
彼はそっと、私との間にある席にビニール袋をおいた。
薄っぺらで、「docomo」と印刷された袋だ。
彼は中からノベルティと思わしきウエットティッシュを取り出し机の上に置くと、ポケットからスマホを取り出した。

当然、ビニール袋は椅子の上にある。

彼はカウンターの向こうの店員に食券を渡すと、ウエットティッシュで自分の手を拭き始めた。

まだ、ビニール袋は椅子の上にある。

私は、あたりを見回した。
明日が祝日だからか、18時というご飯時にも関わらず店内には空席がいくつかある。
つまり、一つ椅子がdocomoのビニール袋で埋まっていても、問題はない。

まあ、いいんだけどさ。
私は彼を観察してみることにした。
髪は短く切り揃えられているし、ヒゲも生えていない。
指輪の類も、腕時計もつけていない。
そして薄っぺらいdocomoの袋からは、さして重要でないだろうパンフレットの類がはみ出している。

スマホのプランを変えたというなら、契約書の類を忘れないようにしようと椅子の上に置くのは、理解できる。
だが、どうやらそうではないらしい。

若い青年が、店内に入ってくる。
アタマにパーマを当てて、メガネを掛けていて、やはりこんがりと日焼けしていた。

「お好きな席どうぞー」と言われた青年は、きょろきょろと見回し、私たちの方へと歩いてくる。
が、席に置かれたビニール袋を見て、首を小さくかしげてから入口の方へと戻っていった。
結局、空調のあまり効いていなさそうな、入り口付近の末席に、青年は腰を下ろしたのだった。

私たちよりも向こうにも、空席はあった。
それが青年に見えていないはずがない。
単に、docomoの袋の置かれた席の前を通るのを避けたかったのだろうか。

ふと、ここで気づいた。
確かに、店内には空席があり、直接的な迷惑にはなっていないだろう。
だが、私に限って言えば、この袋を置いたのが私だという風にも見えるではないか。
そうなると、途端に腹が立ってくる。
登録日 2026.07.19 19:22

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2026.07.19 19:22
八木山
八木山

続き)
だが、私は考える。
男には連れがいて、席を確保しているのではないか、と。
しかし店員は、油そばの丼を男の前に一つだけ差し出す。
男は一人で店にきていたのだった。

卓上調味料から酢の容器を持ち上げ、ぐるぐると丼に回しかける男。


あ、さっぱり、させたいんだ。


酢を元の場所に戻すと、再びウェットティッシュで手を拭く男。
当然、席にはビニール袋が置かれたままだ。

清潔感はあるさっぱりした男、ではあるんだろうけどなぁ。

大学生らしき二人組の男女が来て、店内を見渡す。
店内にまだ空席はあったが、あくまでそれは一席ずつだけ。
このままだと彼らを待たせることになる。

私は慌てて丼に残った煮卵を食べ終えると、テーブルの上に上げて、そそくさと立ち去った。

これで、docomoのテーブルは席から除かれることだろうか。
私はその結末を知らずに、生きていくのだ。


普通に注意すればよかったっすよね、たはー!

解除
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