村咲

村咲 (著者名:赤村咲)

妹ばかり~ おまけのおまけ※全没(3)

「す、すみませんすみません! 今のうちに勉強すれば、ヴォルフ様のお役に立てると思ったんです!!」

 ――ぐ……。

 彼女の弁解に、ヴォルフは内心でうめいた。
 そう言われては、嫌な気はしないから複雑だ。

「最近ヴォルフ様、すごく忙しそうですし、なにもできないのが申し訳なくて……。私がもっと仕事を手伝えるようになれば、ヴォルフ様も楽になるんじゃないかって!」

 ――ぐぐ……。

「それに、け、け……結婚するんでしたら、私もきちんと領地のことを覚えるべきでしょうし……!」

 ――くぅ……。

 照れながら口にする「結婚」の言葉に、自尊心が揺らぎそうになる。
 いったい俺はなにを悔しがっているのだ――とらしくない考えが頭をかすめたとき。

「なにより、ヴォルフ様は領地仕事が苦……いえ、不慣れなようですから! ここは私が!」

 ――くそぉおおおお!!!

 そんなくすぐったい思考を、自尊心もろとも彼女の言葉が叩き割る。
 ぐっと拳を握り、悪気なく見上げてくる彼女の姿に、ヴォルフは内心で悲鳴を上げた。

 ――わざとか!? わざとやっているのか!?

 上げて、上げて、上げて、落として。
 見事な転がしっぷりである。しかし転がされる方はたまらない。
 どうにか表情だけは平静を保っているが、それこそ男としての見栄というものだろう。

 ――く、くそ……! この俺が……!

 数多の娘を弄び、さんざん浮名を流してきた俺が――などと思いつつも、彼の自尊心はボロボロである。
 屈辱感を噛みしめ、怒りどころか憎しみを込めてアネッサを見やれば――。

 彼女はヴォルフの視線を受け、思い出したように瞬いた。
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登録日 2020.03.01 17:45

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