『妹の特権』
妹の笑顔は、
まるで春の風のように柔らかい、
無邪気な言葉に包まれて
世界はほんの少しだけ優しくなる。
手を伸ばせば、
すぐに届く場所に
あたたかな光があり、
その光の中で、私はただ
影になっているだけ。
お兄さま、あなたの目は
私を映すことなく、
パスカルに微笑みかける。
その瞬間、胸が痛むのは
私だけが知っていること。
妹として、
あなたに甘える権利があることを
心のどこかで知っているけれど、
その権利が私には
重すぎて、
手が届かない。
私はただ、
あなたの優しさを
遠くから見つめている。
けれど、それが
私の特権であるかのように
感じる瞬間がある。
妹という立場に
甘えてはいけないのかもしれないけれど、
あなたの温かい声に
私はただ応えているだけ。
それが、私の特権ならば、
少しだけ、
その光に包まれて
生きてみてもいいのだろうか。
けれど、
光の中で私がどんなに
見えないようにしても、
妹の特権は、
いつも空回りして、
届かない場所に
消えていく。
文字数 48,100
最終更新日 2024.12.14
登録日 2024.12.09
「わたしの婚約者、聖騎士は、聖女に魅了されてしまった」
彼の瞳に映るは、
輝く神の御使い、
聖女アカリの微笑み、
その美しさに心は奪われ。
わたしの愛した人は
もう遠く、
その手は
聖女のために伸びている。
言葉もなく、
誓いもなく、
ただその視線に
溶けていくように。
わたしが与えた愛は
ひとときの光、
聖女の影に隠れ、
無力さに涙をこぼす。
彼の心、
知らぬ間に変わり、
彼が望むものは
私ではなく、
神のような彼女だけ。
それでも、
心の奥に残る一縷の希望—
「戻ってきて」と、
彼が振り向くその日まで。
割れた茶碗のように
愛は壊れたけれど、
新たに作ることができるなら—
わたしは、待つしかない。
聖騎士よ、
どうか戻ってきて、
わたしのところに
再び手を差し伸べて。
聖女の魅了は解けても、
あなたの心が再び
私を選んでくれることを
信じて待ち続ける。
文字数 16,011
最終更新日 2024.11.29
登録日 2024.11.29
ゆるふわ かわいい伯爵令嬢は婚約破棄がお嫌い
ふわりと風が吹く午後
陽だまりの中で微笑む君
可愛い笑顔に包まれて
まるで夢のような世界だね
でも心の奥にひとしずく
悲しみがひっそりと潜んで
婚約破棄なんて言葉は
君の世界には似合わない
ふわふわとしたドレスの裾
歩くたびに揺れて
周りの誰もが見惚れるけれど
君の瞳は遠くを見つめて
結婚の約束が破られること
それがどれほど辛いことか
想像もできぬ私たちが
君の痛みを分かち合えるなら
だけど君はまだ信じている
愛はきっと続くと
だから笑顔で見送る
君のその強さが胸を打つ
ゆるふわ可愛い伯爵令嬢
婚約破棄なんて嫌いだよね
でもその想いが叶う日を
私は信じて待ってるよ
文字数 22,774
最終更新日 2024.11.24
登録日 2024.11.24
「婚約者であるわたくしを貶めようとしてハニートラップをかけてくるあなたたち、ざまぁですのよ」
「ざまぁですのよ」
婚約者を貶める企みの
浅はかなるその手管
扇を広げ、笑みを浮かべ
ざまぁですのよ、と告げる私
陰影の奥に潜む影
嫉妬と野望、蠢く心
王宮のバルコニー、冷ややかな風
真実の剣、光を纏い
リチャード様の忠誠は鋼の如く
誘惑の炎、届きもしない
私の微笑み、凛として
愚かなる者たち、膝を屈す
「慈悲深きわたくしの名を
深く胸に刻みなさいませ」
その声は裁き、あるいは赦し
未来を紡ぐ、王家の調べ
計略破れ、顔色を失う
令嬢たちよ、見下ろす私
勝利の余韻、胸に秘め
それでもなお、優雅に去る
扇の端で描く弧は
清らかなる誇りの証
ざまぁですのよ、囁きに変わり
私の勝利、永遠に刻む
文字数 12,052
最終更新日 2024.11.22
登録日 2024.11.22
文字数 285,739
最終更新日 2024.06.21
登録日 2024.04.03