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毎週水曜・土曜の21:00に更新します。
ひととき、夜の静寂の中で後宮の闇に触れてください。
――その花は、摘まれたら最後。
決して、戻ることはできない。
帝の寵愛を受けた妃たちが、次々と謎の死を遂げる後宮。
それは病とされ、偶然と片付けられ、誰も真相を語ろうとしない。
だがその美しすぎる後宮には、ひとつの“決まり事”があるという。
――「花を、戻してはならぬ」。
没落した貴族の娘・香蓮は、罪人の家の娘として静かに後宮に入る。
そこで待っていたのは、絹のように整えられた世界と、
異様なまでに静まり返った妃たちの瞳。
そして、夜ごと廊下に響く“誰かの鈴の音”。
「ここに入った日から、私は少しずつ私じゃなくなっていく」
香蓮は知ってしまう。
この後宮では、女たちは“香”と呼ばれ、
名前を失い、魂さえも縛られていくのだと。
そこにあるのは愛ではなく、選ばれた者への呪い。
そしてその呪いの中心にいるのは、美しい帝――。
これは、愛を与えられた少女が、その愛に殺されていく物語。
鏡の奥に咲く“戻れない花”が、あなたをそっと見つめている。
文字数 7,444
最終更新日 2025.05.01
登録日 2025.04.09
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