こうした業界環境の中、まいばすけっとが成功している理由について、中井氏は次のように説明する。
「まいばすけっとはイオンの集中センターから全部配送している。バックヤードを使わないノウハウをイオンがちょっとずつ強めていき、最近になってそれを実験してみた」
最初は「団地の中など、他に店がないような場所で実験していた。要はうるさい客も文句の言いようがない状況です。交通の足がない人が『生ものがあって嬉しい』と言ってくれる場所を選んで作ってきた」
実験の結果、「遠くに行かなくてもいいという人は結構受け入れてくれるし、高齢化してきたので、そこまでうるさく言わなくなったということがわかった。鮮度云々よりも今は近いことの便利さが上回る」時代になったわけだ。
トライアルGOとまいばすけっとの競合について、中井氏は「めちゃめちゃある」と断言する。「基本的に目指しているものは全く一緒で、コンビニのサイズのお店をコンビニの距離感でたくさん密集して出す戦略」だからだ。
ただし、トライアルGOの優位性として「無人店に近い効率的な運営により、まいばすけっとよりも処理能力が非常に高い可能性がある。もし本当に実現できれば、まいばすけっとよりも効率の良い儲かるスーパーになる」と予測している。
今後の展開について中井氏は、「西友の既存店を使ったサテライト方式で最初はスタートダッシュをかけ、最終的には独立したセンターを作ると思う。この時期、地方企業にとって都会を取るためにはこの手しかなかった」と分析。「何年かはトライアルが相当首都圏を席巻する可能性がある」と予想している。
小型店舗市場の競争激化により、従来の中小スーパーの淘汰が加速することは避けられない。IT技術を駆使した新しいビジネスモデルが流通業界の勢力図を大きく変える転換点を迎えている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)