
「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバル企業で多国籍な環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載を通し、なめられないようにするためのノウハウ「なめてくるバカを黙らせる技術」を指南します。
今回と次回の二回にわたり、なめられて損をしている人の特徴について取り上げていく。
マウントをとられて嫌な思いをしたことがある人なら、思い当たる特徴があるはずだ。
1つでも当てはまったらすぐに対処して、二度となめられて損をすることがないようにしよう。
なめられやすい特徴の1つめは、弱腰の人だ。
相手にマウントをとってなめ腐った態度のやつらの特徴は、やり返してこない相手をしっかり見定めてから攻撃に移るというものだ。
つまり、マウントをとられた時点であなたは、「こいつは扱いやすい」「恐れる必要がない」と判断されているってことなのだ。
ちょっと本題からずれるが、女性がタイプの男性を聞かれた際の返答に、「優しい人が好き」というものがある。
だが、この言葉を文字通りに受け取ってはいけない。これは「強者から優しく扱われるのが好き」と言っているのであって、「反撃する力がなく弱いとなめられている人が好き」と言っているわけではないのだ。
なめられる側は、自分のことを「優しいタイプ」だと思っていたりするものだが、残念ながら、周囲からはそう思われてはいない。優しい、優しくない以前に、弱いだけの存在として認識されていることに気づいたほうがいいだろう。
話を戻して、弱腰の人がなめられることについて。
高齢者が、コンビニやスーパーで店員を怒鳴りつける光景を見たことがないだろうか。実際に見たことはなくとも、ニュースなどで取り上げられているのを見たことが一度はあるはずだ。
このように高齢者が乱暴にふるまう原因として、「脳の前頭葉が萎縮することで、感情をコントロールできなくなったから」と脳の老化の問題として解説されることが多いようだが、私は別の理由もあると考えている。
それは、高齢者は店員がやり返してこないとかたく信じているからこそ、思いのままにキレているのだ。つまり、店員が弱腰だからなめてかかっているのである。
これには、裏付ける証拠もある。店員のネームプレートを外国人名にしただけで、クレームがごっそり減ったというデータがあるのだ。暴力的な高齢者も、日本人のような穏やかに接しくれるかわからない、外国人相手に喧嘩を売るほど肝っ玉がすわっていないということだろう。
また、痴漢にも似たような例がある。被害に遭いやすい女性が見た目を変えて、黒髪で大人しい格好から、髪を染めて派手な格好にしただけで、ほぼ被害に遭わなくなったというのだ。
このように、弱腰の人と見られてしまえば、怒鳴りつけたいだけの高齢者から、欲望を満たしたい犯罪者から、そのほか多くのこずるいやつらから、標的にされてしまうのだ。
弱そうな人だけを狙ってなめてかかるなんて本当に情けない限りだが、こうした事例はあまりにもよくあるため、同時になめられないための対処法も教えてくれるだろう。
つまり、弱腰に見られるような言動をせず、見た目をしなければ、それだけでなめられることはなくなるのだ。
なめられやすい特徴の2つめは、反撃しない人だ。
1で解説した通り、弱腰の人はなめられやすい。しかし、弱腰であることでなめられ、反撃せずにその処遇に甘んじていると、さらなる事態の悪化を招くことになる。
もちろん反撃といっても、灰皿で後頭部を殴る、みたいな暴力で反撃してはいけない。しかし、何か傷つくようなことを言われてもヘラヘラ笑って済まそうとすると、それがさらに相手の加虐心を刺激してしまい、なめる行為がますますエスカレートしてしまうのだ。
筆者にもその経験がある。最初は上司から「もっと真剣にやれよ」と仕事のことだけについて叱られていた。けれど徐々にエスカレートしていって、「君になにか価値はあるの?」と人格否定をされ始めた。しまいには、「奥さんはなんで君なんかと結婚したのか理解に苦しむね」とまで言われたので、ついにたまりかねてブチ切れることになった。そうして、全力で言い返したうえで、さらに上の上司に報告。人格を否定されてパワハラを受けたと騒ぎにしたら、その人は二度と言ってこなくなった。「何もやり返して来ないだろう」と思っていたら想像以上に反撃されたので驚いたはずだ。
当時の自分にアドバイスができるとしたら、「初手でしっかりやり返せ」である。言い返さずに「すいません、すいません」と萎縮し続けていたから、相手もつけ上がったのだ。
反撃しない人がなめられるというのは、国際政治における外交なんかでは、職場の人間関係以上に顕著だろう。
アメリカになめた態度をとる国なんて地球上に一つもないのは、なめたらタダじゃ済まないことをよくわかっているからだ。その一方で、我が国はつねに弱腰外交で、近海にポチャポチャミサイルを撃たれるわ、EEZ(排他的経済水域)侵害を受けるわ、島を不法占拠されるわで、なめになめられている。
日本がどうすればいいかについては、政治に関わることなので言及を避けるが、いずれにしても、結局これは「日本は強く出てもやり返してこない」と各国から見透かされているからだろう。
話が大きくなってしまったので、人間関係のテーマに戻ろう。
反撃してこないやつとして、なめる行為がエスカレートしてしまった場合、どうすればいいのか。
対処法としては、攻撃されたのと同じレベルの反撃をすることだ。バカにされたらバカにし返す。英語では、「tit for tat」といって仕返し、いわゆるしっぺ返しだ。
ここでのポイントは、あくまでやられた分だけ返すということ。やりすぎは先方の加虐を招くこともある。
でも安心してほしい。やられた分だけにとどめても、十分すぎるほどに抑止力があるのだ。
では、具体的にどのようにやり返せばいいか。
たとえば「人脈なさそう」とバカにされたら「あなたも明らかに人脈なさそうですね」と言い返す。「お前ってつまらないやつだな」と言われたら「さすが! つまらない人の悪口は何もひねりもないね」と返す。コツはオウム返しだ。悪口を言う人は、自分のことを棚に上げて、もしも自分が言われたら傷つくだろう言葉を選んで投げてくるので、そのまま投げ返せば相手に大ダメージが入る。
この「なめられないために反撃する」という態度は、税務調査や警察がやっているとも言える。
SNSで「裏技的に荒稼ぎしています」みたいな投稿をする人を数年間泳がせ、ある日突然税務調査に入ってとてつもなく重加算税をかける、一部の目立つ人を見せしめ的に逮捕する、といった出来事をあなたも目にしたことがあるはずだ。
これは、「なめてたら痛い目を見るぞ」という態度を見せつけることで、多くの人に脱税や犯罪を抑止させる効果を期待しているのだ。