なめられやすい特徴の3つめは、権威がない人だ。
権威というと難しく感じるかもしれないが、年齢、職業、そういった誰もが普通に持っている属性が権威を帯びる。年齢でいえば、20代なら20代として認められるふるまいをしていれば問題ない。職業でいえば、会社員なら会社員として、医師なら医師として、それらしいふるまいができればよいのだ。
では、具体的にどうすればいいのか。特別難しいことをする必要はない。「この人は能力が低い」と相手に思わせないふるまいをすればいいのである。
逆に、なめられる人というのは、年齢、職業などに求められる最低限のふるまいができておらず、相手に「能力が低い」と思わせてしまっているってことなのだ。
では、権威を失う事例として、具体的にどんなものがあるのだろうか。
身近によくあるものとしては、「相手の名前を間違える」である。「濱」と「濵」とか「崎」と「﨑」みたいに漢字の違いとか、「浜田」と「浜辺」「黒坂」と「黒崎」みたいに音が似ていて間違えるパターンがある。これをやってしまうと、どんなに社会的ステータスが高かろうと、その能力を疑われることになる。
ちなみに私は、相手の名前を使う場合は、どれだけ簡単な漢字でも絶対に手入力はしない。相手が使った漢字をコピーして書式なしペーストをするようにしている。これなら100%間違えないし、仮に中国人相手で漢字が本来と違ってもそれはパソコンの文字入力システムの責任にできる。
相手から名前を間違えられて気持ちのいい人はいないし、人によっては「仕事の仕方を知らないんだな」とさえ思わせてしまうだろう。基礎的なことのようだが、これができずに権威を失っている人は少なくない。
その他よくある失敗例としては、要点がまとまっていないメールを送ってしまうとか、「先程の件、間違いがありました!」とか「前件追記で」と、何度も訂正や追記の追撃メールをしてしまうのもよくない。これらは「国語能力が低い」「情報処理能力が低い」と思われて相手からなめられる理由を作ってしまうだろう。
名前のミスといった些細な失敗で権威が失われ、なめられるようになってしまうことは、ぜひとも避けたいところだが、うかつなミスということで挽回の余地もある。
その一方で、挽回できないほど権威を失ってしまうこともある。それは、自分の専門領域でのミスだ。
昔、私の会社で契約していた税理士で、所得税や法人税にはめっぽう強い70代の方がいた。頼りにしていたものの、ふるさと納税についての話になり、「知っていましたか? あれはじつは税金が得するように見えて実際は全然得なんてしていないんですよ」と言われ、唖然としたことがある。冗談かと思って、「いやあ、手出し2000円で返礼品をもらえるオトクな制度じゃないですか」と返したが、「違います。私はプロですから間違いありません」と突っぱねられてしまった。
税理士といってもすべての税金に詳しいわけではなく、新制度についていけていないのだなと、自分の中でその人物の信用がガタっと落ちたことを感じる体験だった。
このように、専門領域でのミスは権威性を根底を覆すほどの影響がある。医者であれば医療相談にミスがあってはいけないし、弁護士も法律のアドバイスをミスすると、一瞬で信用が吹き飛んでしまうのだ。
また、自分の実績に見合う行動をとる、というのもなめられないために大事である。
たとえば、「自分は年収1000万円の高収入者だ!」とSNSで自慢する人をたまに見かけるが、それ自体が本来の年収に見合う行動ではないため、陰でバカにされている。そういう人の投稿を見てみると、細かいお家計を気にしたり、ケチケチしていたりして、高収入というPRが虚しく響いている。
同様に、年齢に見合う行動も大事だ。30代40代なのにちょっとしたことで慌てふためいて気持ちの余裕がないのでは、「リスクから逃げ回ってきた人生を歩んできたのでは?」と興ざめされてしまうだろう。
いずれにしても、大まかな年齢、立場など、自分の属性を相手に伝える機会は少なくない。だが、そうすることで「このくらいのボーダーはクリアしているだろう」という、ふるまいの基準値が相手に作られるのだ。
大事なのは、その基準値相応の行動ができるようになること。そうすることで、相手にむやみになめられることが減るだろう。