
「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバル企業で多国籍な環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載を通し、なめられないようにするためのノウハウ「なめてくるバカを黙らせる技術」を指南します。
「人生で損をしてもいい」なんて思う人はいないだろう。そんなこと言われなくてもわかっている。あなたは今、そう思ったはずだ。だが実際には、知らないうちに損をする生き方をしている人は少なくない。なぜだろうか。
結論から言おう。それは、人からなめられているからである。なめられると人生で損をするのだ。だが、多くの人は気づかないうちにそれを受け入れ、大事な人生を台無しにしているのである。
「いやいや、なめられているかどうか気にするなんて、まるで昭和のヤンキー漫画みたいじゃないか」「アドバイスするのでさえパワハラとして厳しく取り締まられる令和の今、なめられているかどうか気にするのは古い」「そもそも、なめられるかどうかなんて人生に関係ない」、そんなふうに感じたかもしれない。
たしかに、なめられているかどうかを気にするような、いわゆる「脳筋バカ」はとっくに絶滅危惧種指定されている。かつてはカッコいいと憧れの的だった暴走族も「珍走団」なんてバカにされるようになり、憧れる人はめっきり減った。今では、なめられないように虚勢を張るほうがカッコ悪いという考え方のほうが、現代ではむしろ普通だろう。
だがそんな今でも、「なめる/なめられる」という問題は間違いなく存在している。というのも、相手を見下し、マウントをとって、自分に都合よく動かそうとする行為は、昔だろうが今だろうが関係なく、人間にとって本質的な振る舞いだからだ。本質であるがゆえに、この「なめる/なめられる」というマウントは、人が関わるすべての社会を支配していると言っていい。
たとえば、こんな経験をしたことはないだろうか。
・面倒な仕事を押しつけられる
・同僚と比べて自分だけ扱いが雑
・平気で遅刻してきてお詫びもない
・生返事ばかりで真剣に話を聞いてもらえない
・仕事の頑張りや結果を正当に評価されてない
これはなめられることでこうむる実害例だが、多くの人が経験していると思う。正社員として働いていようがパートタイムで働いていようが関係なく、もちろん職種も、年齢も、性別も関係ない。職場で、学校で、友人関係で、家族の間で、上記のように軽く扱われ、嫌な思いをしたことがあるはずだ。
とはいえ、こういう扱いを受けるのにはさまざまな要因があるだろう。あなた自身に問題がある可能性もある。あなたにはいっさい悪いところがなく、相手が一方的におかしい場合もある。所属している組織の価値観がおかしいというケースも少なくない。
だが、そうした事情を考慮したとしても、その根底にどっしりと存在しているのが、「なめられているから軽んじられる」という単純な理由だ。言ってしまえば、なめられているから面倒な仕事を押しつけられ、なめられているから雑な扱いを受け、なめられているから待ち合わせには遅刻され、なめられているから話を聞いてもらえず、なめられているから正当に評価されないのだ。
極論すぎると感じるかもしれないが、あながちそうとも言えない。いや、あなた自身も気づいているはずだ。会社をはじめとしたあらゆる人間社会が、一見合理的なようでいて、じつは多くの部分で、いっときの感情的な気分や人の好き嫌いなど、非合理的な価値観で動いていることに。
改めてあなたの周りに目を向けてほしい。小さい頃を思い返してみても、損な役回りを押しつけられる人には合理的な理由がなく、「断らなそうだから」「弱そうだから」「怒らなそうだから」とかだったのではないだろうか。そして大人の社会でも同じような理由で、不遇な立場に追いやられている人がたくさんいるのではないだろうか。
私は人生を生きていくなかで、なめられて損をする体験を重ねてきた。20代前半は学歴のなさからなめられて損をし、英語の資格を取って海外で働くようになってからは外国人の同僚や顧客から日本人ということでなめられて多大な損をこうむってきた。起業してからは後ろ盾のない個人事業主ということでなめられ、時間的にも金銭的にも、取り返しのない損をしてきたように思う。
だからこそこの連載では、なめられることの不利益を強く主張していきたいと考えている。そして私が人生をかけて体得してきた、絶対になめられない技術を解説していきたいと思う。