
「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバル企業で多国籍な環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載を通し、なめられないようにするためのノウハウ「なめてくるバカを黙らせる技術」を指南します。
これまでの連載で、なめられたら損をするということがよくわかってもらえたと思う。
今回からは、なめられないためにはこう対応しろという方法を、数回に分けて具体的に伝えていく。どれも実践的で、今日からすぐに役立つ技術なので、読んだらさっそく使ってもらいたい。
なめられないための対処法の1つめは、「自分を安売りしない」ことだ。
世の中には、わかりやすくなめてかかってる人もいるが、表面的には敬意を示しているようで、実際にはなめてかかっているということも少なくない。
そういうタイプの人は、物腰は丁寧で柔らかく、こちらに対して好意を持っているかのような雰囲気を出してくるが、心の中で舌を出し、テクニカルにあなたを操って利用してやろうと考えているのだ。そしてこちらに隙を見つけたとたん、手のひらを返してくるのである。
こうしたケースについてイマイチピンと来ない人もいると思うので、筆者が遭遇した具体例を出そう。
私は事業をおこなっている一方で、ビジネス記事を書く仕事もしている。そのため、書いた記事を見たり、仕事の実績を見たりしたテレビ関係者から、番組への出演の声がかかることがある。
テレビ出演と聞くと舞い上がってしまう人も少なくないだろうが、ライターや事業をしている自分の場合は特にそうだった。仕事にとって宣伝効果があると期待して有頂天になってしまうのだが、それで痛い目を見たことがある。
以前、あるテレビ制作会社から「番組の企画について」と連絡が入った。実際に話してみると、「おそらく、あの◯◯の有名番組に出演いただくことになりそうです。出演料は◯◯で……」という話題も出されたので、自分が有名なテレビ番組に芸能人と一緒に出演させてもらえると思いこんでしまった。
そうして嬉しくなった私は、ホイホイと自分が知る情報をペラペラしゃべった。相手はとにかくおだててくる。「いやあ、さすが専門家の深い知見で素晴らしい」と。私はますます調子に乗ってペラペラと1時間、2時間と話し続けた。
翌日も電話がかかってきた。昨日と同じように気分よく話していたのだが、途中から雲行きが怪しいと感じてきた。いっこうに出演に関する具体的な話にならないのだ。
もしかしたら、打ち合わせと称して情報を抜かれているだけでは? そんなふうに怪しんでいた矢先、その疑いが的中していたことが判明する。自分が話した内容を元にした番組がオンエアとなっていたのだ。
いやいやさすがにお前の被害妄想じゃないのか、と思われるかもしれない。
だが違う。自分しか知りえない体験談を「詳しい専門家の証言によりますと……」という体で紹介されていたのだ。
自分は相手の手の上で踊らされ、都合よく情報を抜き取られて、番組制作のネタ作りに利用されていただけだった。もちろん出演もできず、ギャラもない。相手から完全になめられていたのだ。
この経験から学んだことがある。
それは、どんな相手にも自分を安売りしてはいけないということ、ましてや無料で情報提供なんて絶対にやってはいけないということだ。
テレビ出演も、専門家として仕事として話をする以上は、無料でなんてする義理はない。ボランティア活動でないのだから、考えてみれば当然の話だ。
それ以降、いくらテレビ関係者から電話が連絡が入っても、本格的な話をするときは「仕事」としてしか絶対に受けないスタンスに変えた。これを書いている時点でトータルで地上波の番組に5回出演したが、この件以降はすべて報酬をいただいて出演するように徹底している。