なめてくるバカを黙らせる技術

頼まれたとき「なめられる人」は無償で助ける 「一目置かれる人」はどうするか

2025.04.23 公式 なめてくるバカを黙らせる技術 第6回
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無償や安く提供されたものを人は大事にできない

また別のエピソードを紹介する。
昔、ある人気アーティストのライブ後に台風で電車が動かなくなって帰宅難民が続出、SNSで助けを求める参加者に、宿泊先や食事を提供する親切な人がたくさん現れたという出来事があった。
これだけ聞くと美談だが、話はそこで終わらなかった。
じつは助けられておいて「自宅に猫がいてうるさかった」とか「食事がイマイチだった」「快適に眠れる家ではなかった」という具合に、親切に対して不満の声が投稿され、またたく間に炎上したのだ。

こうした善意は無償でおこなわれるものであり、それゆえに美しいけれど、受け手がやってもらって当たり前という態度となると話は変わってくる。
これは、善意で助けたものの文句を言われたというエピソードなので、「自分を安売りする」に該当する話ではないものの、無償や安く提供されたものを人は大事にできないという人間の心理がわかるエピソードだろう。

大事にされない人は、自ら「利用される側」になろうとしている

この世は、「利用する側」「利用される側」に分かれる。
根っからの悪人で最初から利用する気満々の人でなくても、やりとりをする中で「こいつならうまく利用できる」と少しずつなめてきて関係性が変わっていき、結局、「利用する側」「利用される側」に分かれるのだ。
ここで大事なことは、なめてくるほうが一方的に悪いのではない、ということだ。「無償でやります」といった態度を見せ、なめられる隙を与え、自ら「利用される側」に進んでいったほうにも責任があるのだ。

私が体験したテレビ出演の話も、最初からきっぱりと「お仕事ですから報酬をいただきます」と伝えれば、先方も上司とかけ合い、正式な仕事としてオファーへとつながったかもしれない。
無料や格安で自分を安売りすれば、次第に雑に扱われるようになり、結局最後にはなめられる側に甘んじる。
そして、これは現実社会に普通に起こる珍しい出来事じゃない。

では、対策としてどうすればいいのか。
フリーランスやひとり社長で働く場合は、わかりやすいだろう。「無料で仕事しない」「相場からかけ離れた安売りや値引き交渉には応じない」、これだけで解決する。
だが、上司からの指示には基本的に逆らえないサラリーマンの立場ならどうすればいいか?
どこの会社でも聞く話が、最初はワラにもすがる姿勢で仕事の手伝いを頼まれたのに、気がつけばいつの間にか、「手伝って当然。やってもらって当たり前」という態度に変わっていた、ということだろう。
もちろん、組織全体として利益を追求するために、時には仕事を助け合うことは必要だ。サラリーマンは業務命令として仕事を指示されるので「やりたくありません」は通らない。ではどうすればいいか?
結論、言われたままやるのではなく交渉するんだ。

交渉するという武器

たとえば、仕事の手伝いを依頼されたときに、「わかりました。ですが、自分の現状はこうなっているので、全部は時間的に難しいです。そのため、ここからここまではお手伝いできますがそれでよろしいですか?」という具合に厳密に条件を示してから受け入れる。こうするだけで、「忙しい中、頑張って手伝ってくれているのだな」ということがしっかりと伝わる。
まともな一般常識を持ち合わせている相手なら、お手伝いをやってもらって当然とは考えないし、あなたに少なからず感謝を感じるだろう。

また、人間には、返報性の原理という心理効果があって、「やってもらった好意はお返ししたい」という感覚が生まれる。
やってもらいっぱなしだと悪いと引け目を感じて、自分が困ったときに助けてもらったり、雑に丸投げされたりしないで済むのだ。また、本当に忙しい場合は「前回はお手伝いできましたが、今は自分もこういう事情で大変なので」とお断りする正当な理由になる。
こうしたことを一切せず、毎回言われるままに仕事の手伝いをしていざお断りをすると「急に手伝ってくれなくなった」と理不尽に逆恨みする人もいる。

このように、サラリーマンが業務命令として仕事を受ける、他の社員を手伝うにしても、厳密な交渉を通すことで「義理」を作れるのだ。
そうすれば、「自分は便利な道具でもなければ、業務のゴミ捨て場でもないぞ」と、安売りを事前に防止することができるのである。

それでも、上司から仕事を自分ばっかりたくさん振られてしまうようなら、給与交渉の材料にしてしまえばいい。
多くの会社では、定期的に人事評価面接で目標の達成、未達などを話し合う場があると思う。
そのときに依頼された仕事を想定以上にこなした実績を材料に交渉をする。これをすることで、正当に評価されることがあるだろうし、もしも上司がそこまで考えず単に頼みやすいから、自分が楽をしたいからという理由だけで仕事を振ってきたら、「あんまり丸投げしすぎると給与交渉の材料にされる」と上司も簡単に仕事を振りづらくなるのだ。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

なめてくるバカを黙らせる技術

黒坂岳央 /
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