「いつも私だけ扱いが雑」「待ち合わせをするといつも遅刻される」「損な役回りを押しつけられがち」
気にしても仕方ないと思いつつ、「私、なめられてるのかな」と悩んでしまう。そんな人は少なくないようです。じつは、この「なめる/なめられる」問題はささいなことのようで、人間関係、仕事、ひいては人生すべてさえ左右する重要なトピックスです。
実業家でライターでもある黒坂岳央氏は、グローバルな環境での勤務経験、独立起業を経て、「なめられると人生で損をする」という真理にたどり着いたそうです。この連載をまとめ、加筆・改稿したビジネス書『なめてくるバカをだまらせる技術』が、アルファポリスより好評発売中です。
AIは、「なめる/なめられる」問題にも深くかかわっている。日進月歩で技術が進んでいるが、『なめてくるバカをだまらせる技術』を刊行した時点(2025年10月末)での見解を書いておきたい。
2025年の今、ChatGPTをはじめとする生成AIは日常の景色になった。モデルはアップグレードを重ね、もはや平均的なビジネスパーソンの知識量を軽く超えていると感じる場面も多い。
そこで、一部の人はこう考えたようだ。「AIの知恵に丸乗りして、賢く見せよう」。そんなわけで、SNSやブログには、突然文章のトーンが激変したアカウントが散見されるようになった。半年ぶりの投稿がいきなりいかにもAIだ。しかも妙に横文字が多い。そんなギャップが漂えば、読者は「ん?」と違和感を覚える。
本人は賢く見せようとしたムーブのつもりでも、AIに着せられた借り物スーツが透けて見え、むしろなめられてしまうのだ。
生成AIはあくまでツールだ。道具をどう使おうと構わないが、アウトプットに責任を負うのは人間だ。ここを取り違えると痛い目を見る。
その典型例が、AI反省文問題だ。とりあえず、謝罪文をChatGPTに書かせればカドが立たない。そう考えてAI生成文をそのまま上司に提出した若手社員が、社内ポータルでさらされ大炎上したケースが報道されたのだ。反省文の目的は、反省して次に活かす、であって場を収める文章芸ではない。心のこもらないテンプレ謝罪は、相手の怒りの温度を2割増しにするだけだ。AIに代弁させれば目的と手段が逆転し、信頼残高はマイナスに振れる。
また、専門家は自分の領域において責任を持って発言をし、間違いや訂正要望、意見に応じることまでが仕事の範疇となる。それにもかかわらず、すべてをAIに代弁させるならもうその専門家の価値はなくなってしまうし、そんなことをしているとバレたら仕事は来なくなってしまうだろう。2025年2月、米大手法律事務所がAI生成の架空判例を訴訟書面に混入させ、連邦判事から制裁金を科された。生成AIブームの裏側でAI丸投げ炎上は世界規模で増殖している。
つまり、実力を磨いてこなかったことでなめられていた人にとって、生成AIは救世主のように見えるかもしれないが、その実、AI丸投げがバレてますますバカにされなめられるリスクを抱えている、ということを忘れてはいけない。