ギャンブルから競技カルチャーへ…サミー、m事業で挑む“ポーカー革命”

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m HOLD’EM 目黒店

●この記事のポイント
・サミーが新規事業として立ち上げた「m」事業は、若者を中心に広がるポーカーを“マインドスポーツ”として再定義し、店舗とアプリの両輪で新たなカルチャーを創出している。
・国内ポーカー人口は4年で約1.5倍の240万人に拡大。初心者講習やトーナメントでコミュニティが形成され、女性や大学生など新層の参加も増加中。
・サミーはアプリ、イベント、フランチャイズ展開などを通じて業界の基盤づくりを進め、“囲碁・将棋・麻雀に続く第4の知的競技”としての定着を狙う。

 いま、若者たちの間で静かなブームが起きている。トランプゲームの王道「ポーカー」だ。

 かつてはカジノやギャンブルの象徴とみなされていたこのゲームが、いまは「マインドスポーツ」「競技カルチャー」として急速に市民権を得つつある。大学のサークルやYouTubeチャンネルでポーカーを学ぶ学生たち、SNSでプレイ動画を発信するインフルエンサー、週末に仲間とトーナメントを楽しむ社会人――。プレイヤーの層は確実に広がっている。

 この流れにいち早く注目し、事業として本格参入したのがサミー株式会社だ。パチスロメーカーとして知られる同社は、2021年に新規事業としてポーカー事業「m」を立ち上げた。

 現在、東京・目黒と福岡・中洲に直営店を構え、アプリゲーム「m HOLD’EM(エムホールデム)」も展開している。新規事業本部m事業部部長の伊藤保勝氏は、こう語る。

「サミーが新規事業として最初に立ち上げたのが、このポーカー事業でした。人口減少で遊技業界全体が縮小する中、“新しい遊び”を創る必要があった。ポーカーはその可能性を最も感じた領域でした」

●目次

4年で市場倍増、全国500店舗に迫る拡大

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 サミーがポーカー事業を構想したのは5年前。当時の国内プレイヤー人口は約160万人。だが、直近の調査では約240万人に増加したと伊藤氏は語る。店舗数も全国で200店舗ほどから、現在は500店舗を超えた。約4年間で市場規模が倍近くに拡大した計算だ。

「大学や高校にもポーカーサークルが増え、YouTubeで戦略を学ぶ人も増えました。エンタメが多様化するなかで、“頭を使う遊び”としてポーカーが選ばれているのだと思います」

 サミーが運営する直営店舗「m」は、明るく開放的な内装が特徴。目黒店を訪れると、バーのような照明とスタイリッシュなテーブルが並び、女性や初心者でも入りやすい雰囲気が漂う。来店者の7~8割が25~39歳の若年層で、女性も約2割を占めるという。

 初心者講習も人気だ。約50分・3000円で基礎から学べるプログラムがあり、月に100人前後が受講している。

「1日3000円で遊べる」――身近なマインドスポーツ体験

 ポーカーと聞くと「高額を賭けるギャンブル」を想像する人も多いが、国内で展開されるポーカールームは風営法上の“ゲームセンター業態”であり、金銭のやり取りは一切ない。

 プレイヤーはチップを購入してプレイするが、換金はできない。あくまで遊戯としての“擬似的な勝負”を楽しむ形式だ。

「500点分のチップを3000円で購入すれば、ほぼ1日遊べます。ボウリングに行く感覚で、気軽に楽しんでもらえると思います」