夫婦で話していると、別にけんかをしようとしているわけじゃないのに、だんだんギスギスしてしまう。話せば話すほど悪い方向に行って、気づくと言い争いになってしまう。そんな経験をしたことがありませんか?
たとえば、夕飯に何を食べるか話していたはずなのに、
妻「夕飯、どうしようか」
夫「なんでもいいよ」
妻「なんでもいいよが一番困る。メニューくらい考えてよ」
夫「(優しさで、なんでもいいって言ったつもりなのにな)君が好きなものでいいよ」
妻「いつもあなたは何もしてくれない。料理も掃除も洗濯も私ばっかり……」
こんなふうに、家事の負担が偏っているという言い争いになってしまう。
子どもの習いごとの話をしていると、育児の偏りの話になって空気が重くなってしまう。お金の話をしていると、相手のムダ遣いを責めるケンカになってしまう。そうして、いつの間にか「それ、前にも言ったよね」「結局、あなたは何もやってないじゃん」みたいな方向に行ってしまう。
こうしたトラブルの際、よく「互いに忙しいから仕方ない」とか「夫婦は価値観が違うから」とか「話し合いが足りない」といった結論にしがちですが、本当にそうなのでしょうか。
ちょっとシチュエーションを変えて、職場の場合を思い浮かべてみましょう。メンバーみんなが忙しくても、それぞれの価値観が違くても、全員で話し合う時間を十分取れなくても、もっとうまく話し合えているように感じます。家庭での会話は、なぜ感情的な争いになりがちなのでしょうか。
家族は職場と違って素の感情がさらけだせる、というのはあるとしても、もっと重要な視点があります。それは、家庭での会話はどうしても「現在」に引っ張られすぎているという点です。
家庭で話すことは、だいたい決まっています。
「今日のご飯どうする?」
「明日の送迎どうする?」
「ゴミ捨て、どっちがやる?」
こんな感じの話題です。もちろん、こうしたことを話すことも大事です。ですが言ってしまえばこれらは全部「いま」の話だけです。じつは家庭での会話のほとんどが、目の前の問題をどうさばくか、に使われています。
先ほど、職場の話をしましたが、これはビジネスでもよくある話です。今日の売上、今月の数字は毎日のように話すのに、「半年後、このチームどうなっていたい?」「一年後、どんな状態だったら成功と言える?」みたいな話は、意外とされていないのです。
そうなるとどうなるのか。目の前の問題をどうさばくかだけにとらわれていると、仕事は消耗戦になります。心がすり減って、職場の人間関係がギスギスしたものになりやすいのです。
これは、家庭でも一緒です。
では、どうすればいいのか。
ビジネスの場合、組織で目標を立て、それをメンバーで共有する、ということになります。
目標がメンバーで共有できていない組織ではメンバーの興味は内向きになり、「あの人、仕事が少なくてずるい」「私ばっかり雑務押し付けられている」といった不平不満が起きやすいのですが、目標がメンバーで共有できている組織では、メンバーの興味は外へ向かうため、そうしたぶつかり合いが減ります。
ですが、ここで「家庭でも目標を立てましょう」と言うと、ちょっと身構えちゃう人も多いと思います。でも、家庭では仰々しい目標を立てる必要はありません。家庭内の雑談の中で、未来について話すだけでいいのです。たとえば、こんな話で十分です。
「もし海外に住むとしたら、どこがいい?」
「1000万円あったら、何に使いたい?」
「5年後、家族でどんな休日を過ごしていたい?」
夫婦で答えが完全に一致しなくても全然問題ありません。大事なのは、未来について話している時間が増えること。これだけで、不思議と家庭の空気が変わります。