「家族」というチームのつくり方

仕事、家事、育児で忙しすぎてギスギス! 多忙な共働き世帯に必要なたった一つの考え方

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子育てが忙しい時期とは?

多くの子育てをしている家庭で、子育て自体が忙しい時期と、仕事が忙しい時期は、どうしても重なってしまうものです。
そのため、夫婦が互いの仕事の大変さに理解を示し、家事育児で協力し合わなければいけないのですが、なかなかそうはいきません。仕事で家庭をおろそかにする相手に不満を持つ一方で、その相手は仕事の大変さを理解されないことに不満を持っている、といったようなことはどこの家庭でも発生している問題なのではないでしょうか。
今回から2回に分けて、家庭の中での「忙しさを理解してもらえない」問題について見ていきます。

先ほども書きましたが、子育て自体が忙しい時期と、仕事が忙しい時期は重なります。まずは子育てのほうから見てみましょう。
子育てが大変な時期は、子どもが生まれる前からずっと続きます。ようやく一段落つけると言われるのが、子どもが10歳の頃。そのくらいになれば、子どもは身の回りのことが、ある程度自分でできるようになり、親としてもずいぶんと楽になるのだとか。
ちなみにわが家の息子は8歳で、身の回りのことがまだ自分だけではできません。朝起きる、ご飯を食べる、学校に行く、宿題をやる、お風呂に入る、歯磨きをする、寝る。これらすべてを、親からの声かけがないとできません。
親としては、全部1人でやってくれるようになればどんなに楽かになるのか、と思わない日はありません。

しかし、子どもが身の回りのことを自分でできるようになれば楽になるのかと言えば、そんなこともありません。
小学校高学年、中学校、高校になれば、「受験」が大きなテーマとなり、そうなった場合、さまざまな負荷がかかってくるからです。
とりわけ親は、子どもに対して経済的なサポートをすることになり、それは、大学を卒業するまで続きます。

つまり、親としての忙しさのピークがどこにあるかを考えてみると、子育て自体が大変なのは子どもが生まれからの10年間、経済的に大変なのは22年間もある、ということになり、休まる時期はなかなか来そうにないと言えそうです。

仕事が楽になる時期も来ない?

一方で、仕事の忙しさのピークはいつでしょうか? 私のケースを一つの例として説明しましょう。

私は新卒でコンサルティング会社に入って13年、独立して13年になるのですが、時間に余裕があった時期がほとんどありません。
入社したての頃は、とにかく必死でした。上司から与えられる仕事の量が多すぎて、また自分の仕事の生産性が悪すぎて、毎日毎日完了しないタスクが山積みになり、ノイローゼになりそうでした。
私が務めていた会社では、「仕事は過負荷であるべし」という考えがありました。筋トレもそうですが、人間というのは負荷をかければかけるほどそれに耐えうる人間になれるのだという考え方です。先輩が3年で身につけたことは、後輩は3か月で身につけなければならない。そうでなければ、社会に役立つコンサルタントにはなれないのだと教わりました。

フレックス制というものが導入されていて、普通、フレックス制といえば、労働時間の開始時間と終了時間を自由にして、通勤ラッシュを避けたり、もっとも集中力が高まる時間に仕事をする時間をズラしてよい、という仕組みですが、当時は、「何時間でも働いていい制度」だと説明されていました。
社会人1年目の月の労働時間は400時間を超えていましたが、能力がない人が成果を出そうとすれば時間をかけるしかない、と上司から言われていましたし、私もそう本気で思っていました。
3時間睡眠を身につける方法を扱った本が流行っていて、これは素晴らしい! と感動して実践しようとして大寝坊をしてしまったこともありました。

とはいえ、そんな激務にさらされながらも、最初の2年間は、上司が毎日タスクレビューをしてくれ、私の生産性は徐々に、そして飛躍的に上がっていきました。
そうやって生産性が上がってくるとそのうち仕事にゆとりが出るはずだ、と思っていたのですが、3年目の最後でコンサルタント・オブ・ザ・イヤーという賞をいただいて、そこからさらに忙しくなっていきました。
クライアントからの依頼が増え、「高野さん指名でお願いします」とほかの人に振れない案件も多くなり、売上が伸びていくと、会社からは「後輩の育成をしなさい」と部下をつけられました。
そうなると、チームの売上を管理しなければいけなくなり、自分の売上だけでなく、部下の売上をどう上げるのかを一緒に考え、達成できなければ達成できるようになるための対策を打ちながら、業績をカバーすべく、自分の実績も上げないといけません。
部下が育ってくると、そのうち仕事にゆとりが出るはずだ、と思っていたのですが、育ってきた部下はほかの部署に異動になったり、部署の人数が増えてめちゃくちゃ手のかかる人が配属になったり、退職してしまったりして、全然楽になりません。
仕事もなんとか後輩に役割を分担していくのですが、任せた先でクレームをもらったり、成果が出なかったりで、結局、私が出ていくはめになって、余計に時間が取られたりしました。
様々な会議に参加するようになり、日中はコンサルティングでお客様のところに行き、夜は数々の会議に参加し、土日に溜まった自分の業務をする。そんな日々を送っていました。

そうこうしているうちに、13年が経過していました。
そのタイミングで起業したものの、それによって自分のペースで仕事ができるようなことはありませんでした。新卒で入ってから歩んだ道をトレースするかのように、失敗と成長を繰り返し、年々忙しくなっていったのです。
最初の2年は起業したてで学ぶべきことが多く、謄本の作成から登録、経理処理や節税なども知りません。それまで会社の看板で仕事をしていたことにも気づかされました。
商品コンセプトも定まっておらず、営業活動してもなかなか決まらない日々。さまざまな勉強会や交流会に参加しては、自分の存在価値の低さにおののいたりもしていました。
そうこうしているうちに、紹介で受注が取れてきて、そこに注力すればするほど成果が出て、さらに紹介がもらえるようになり、忙しくなっていく……。

毎年、「今年こそ仕事の時間にゆとりを持つぞ!」と意気込むのですが、結果的に前年よりも忙しくなっている。
皆さんはいかがでしょうか? 私は、年末年始に、毎年奥さんと2人で1年の振り返りと次の年の目標を立てます。そこで「今年こそはゆとりがでるようになりそうだよ」と毎回言うのですが、「それ、去年も言ってたよね」と言われるようになり、「もう言うのやめよう、あなたは忙しいのが好きなんだよ」と笑いながら言われています。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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