「家族」というチームのつくり方

1on1面談を家庭に導入するとどうなるか?

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家族と1on1、したことある?

家族との1on1面談、できていますか? このように問うと多くの人が面食らうのではないでしょうか。1on1面談と言うと構えてしまうでしょうが、1対1の対話ならどうでしょう。
日常的にやっているという人もいれば、そういえばほとんど対話をしていないな、という家庭もあるかもしれません。

皆さんもご存じの通り、いまビジネスの現場で、1on1面談が重要視されるようになってきています。
そんな1on1面談を、ぜひとも家庭内に取り入れていただきたいと思っているのです。

チームを元気にするには、1on1がもっとも効果的

ビジネスの現場において、チームメンバーの目標への共感度を高めることはきわめて重要です。
「いまやっている仕事の目的は何か」「いつまでにどこに向かうのか」「そもそも、その目標に対して、どのくらい共感できているか」といったポイントへの各メンバーの共感度によって、メンバーそれぞれが目標達成に向けたアクションを実行してくれるかどうかが変わってきます。
では、チームメンバーの目標への共感度を高めようと思ったら、リーダーとしては、何をすべきなのでしょうか。

まず、リーダーがスピーチをしてみるのはどうでしょうか。感動的な演説をして、部下の目標への共感度を上げるのです。
話術も人望も兼ね備えたカリスマ的人物なら可能でしょうが、ほとんどの人には難しいでしょう。

セミナーに行ってもらうのはどうでしょうか。新しい知識を提供されて、スキルアップに伴って、共感度が上がってくれるはずです。
これもなくはないですが、セミナー講師の力量しだいですし、本人のモチベーションにも大きく左右されるでしょう。

共感度を上げるなら、1on1面談がもっとも手っ取り早く、もっとも効果的です。
特別なスピーチ力も必要なければ、研修講師の技術は必要ありません。1対1で向き合って、対話をするだけです。
それが、もっとも実現可能性が高く、もっとも効率的なのです。

それにもかかわらず、1on1面談をおざなりにしている組織がほとんどです。
日々の業務に追われ、「忙しいので1on1面談の時間を取れていない」とか、「毎日顔を合わせているのに、改めて1on1面談をやるとなると、変に堅苦しくて意味がない」などと様々な理由をつけて、面談を定期的に実施しないのです。

そこで私は、定期的な1on1面談の実施をルール化して、組織の共感度が放っておいても高まるような仕掛けを作るように提案しています。この、ルール化というのがミソで、「ルールに沿って行動するだけで、ほぼ自動的に共感度が上がっていく」ようにすることが重要なのです。

家庭でも1on1は使える

ビジネスの組織においてチームメンバーの「目標への共感度」が重要であるように、家庭において家族の「目標への共感度」は重要です。
家族の「目標への共感度」が低ければ、その家庭はまとまっていきません。

父親と母親はそれぞれ、「仕事で成果を出したい」「給料を上げたい」「休日を増やしたい」「家事をかんぺきにこなしたい」「家で食事を取るようにしたい」といった、仕事や家事への目標を持っていると思います。
子どもに対しても、「幸せに生きてほしい」「人の気持ちがわかる子になってほしい」「友達の多い子になってほしい」「学校の成績を上げてほしい」「運動の能力を身につけてほしい」「何か打ち込めるものを見つけてほしい」「高校や大学の進路で、偏差値の高いところに行ってほしい」といったように、父親と母親それぞれで目標があると思います。そして、子ども自身にも、もちろん目標があると思います。

これら家庭内の目標は、家族のメンバーで一致しているでしょうか? すべては一致していないとしても、家族で共通の目標を掲げられているでしょうか? その目標には、全員が共感できているでしょうか?

組織というものは放っておくと、目標を見失っていきます。毎日の作業に追われ、その作業の目的はなんだったのか、どこを目指していたのか、と目標を見失っていき、ただ作業をこなすだけの集団にあっという間になってしまいます。
そこで、定期的な1on1面談の場を持ち、目標を再確認し、目標への共感度を高め続けることで、組織を再活性できるのです。
ビジネスのチームも、家族も、共通の目標を持った人の集まりという点では一緒です。なので、家庭の目標も定期的に確認しておかないと、どんどん見失われていってしまうのです。

というわけで、もう一度聞きます。皆さんは、家庭で1on1面談ができていますか?

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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