「家族」というチームのつくり方

1on1面談を家庭に導入するとどうなるか?

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1on1面談の技術

1on1面談には、明確に「技術」が存在します。平たく言えば、下手くそな人と上手な人とで、相当な格差があります。

1on1面談が上手いと、メンバーの目的への共感度はみるみる上がっていきます。組織の一体感は上昇し、まとまりが出てきます。メンバーそれぞれの意思疎通がよりスムーズになり、コミュニケーションの問題が起こりにくくなっていきます。
下手くそな人は、面談をしても、相手から「この時間って意味があったのかな?」と疑問に思われたり、「説教された」と不快に感じられてしまうこともあります。
こうした違いは、技術の差なのです。

家庭も同じです。家族で話し合うことでコミュニケーションの問題が解決していく家庭と、どんなに話し合っても問題が解決しない家庭が存在しています。問題が解決するどころか、話し合うことでさらに問題が起こるので、なるべく関わりを避けていくようになってしまう家庭も少なくないようです。いずれにしても、こうした違いが生まれてしまうのは、話し合いの技術の差なのです。

まず、「1on1面談の5レベル」を理解しておく必要があります。このレベルの階層に照らし合わせてみれば、自分がどの段階の面談をしているのかがわかります。

【面談の5レベル】
レベル5:課題鮮明化面談
レベル4:目標共有面談
レベル3:お悩み相談室面談
レベル2:火消し面談
レベル1:雑談面談

1on1面談を実施している組織のリーダーの多くが、1on1面談=雑談面談だと考えています。しかし、雑談をしても共感度は高まりません。部下から、せいぜい、無害なおもしろい人くらいにしか思ってもらえません。
「面談というのは、1対1で話をしたらいいんですよね? それならしてますよ。喫煙所であったときには1対1で話してますし、職場でも席が隣なので、仕事中ずっと1on1をしているようなものです」と言う方がいます。しかし、それでは面談とは呼べず、単なる雑談にすぎないのです。
「上司と部下とで1on1面談していますか?」と質問すると、上司のほうは「はい、しょっちゅうしています」と答えるのに対し、部下は「面談してもらったことはありません」と言うのですが、上記のように雑談しかしてもらえていないためでしょう。
1on1面談は、1対1で場をつくる必要があります。そして、部下が「私に向き合ってくれた」と感じる場にならなければいけません。

レベル2は火消し面談です。
たとえば、「大きなクレームが発生した」とか、「じつは仕事を辞めたいと思っている」とか、「現場の〇〇さんと関係が上手くいっていない」とか、そういった大きな問題=火が起こったときに、その火を消すために臨時で面談をするというのがレベル2です。火は消さないといけませんから、火消し面談をするのは上司として当然のことです。しかし、火消し面談しかしていないとしたら、それは仕組みとは呼べず、組織の共感度を上げるまではいきません。

レベル3はお悩み相談室面談です。
部下の悩みに寄りそうことは重要です。ですが、ずっと悩みを聞き続けるだけでは共感度が高まっていきません。悩みを聞いたあとで、では、どうしていくのか、レベル4の目標共有面談に進むべきです。
目標を共有すればゴールではありません。どうすれば目標に届くのか、大まかな方向性が一致していることが重要です。これを、レベル5の課題鮮明化面談と呼んでいます。

面談が飛躍的に上手くなる「GROWモデル」

面談の5レベルを見ると、目標共有面談や課題鮮明化面談は、難易度が高く感じるかもしれません。ですが、面談の「型」を使うと誰でも上手くなります。とっておきの型をご紹介します。

【GROWモデル】
G:ゴール……目標
R:リアリティ/リソース……現状/資源
O:オプション……選択肢
W:ウィル……意思決定

GROWモデルは、ビジネスコーチングで開発された手法で、1対1で相手の目標を引き出し、より鮮明化してアクション決定まで導くように設計されています。
ここで示された質問例をそのまま使うと、相手から目標を引き出し、課題の鮮明化までできてしまうという優れものです。
以下に質問例を示すので、ぜひこのまま、使ってみてください。

①G:ゴール
□具体的にはどういうことですか?
□どれくらいの数値になると達成感が得られるのでしょうか?
□他に目標はありますか?
□どうしてその目標を達成したいのですか?
□その目標を達成することにどんな価値がありますか?
□その目標についてどう思いますか?

②R:リアリティ/リソース
□そのことについて、現在はどんな状態ですか?
□現状の中で上手くいっていることはありませんか?
□なぜ上手くいっているのでしょうか?
□上手くいっていないことは何ですか?
□上手くいっていない要因は何だと思いますか?
□他の人・他のお店・競合他社はどうやっているのでしょうか?
□その件について一番詳しい人は誰ですか?

③O:オプション
□どんなことをすると目標が達成できそうですか?
□どうしたら問題が解決すると思いますか?
□どんな選択肢がありますか?
□他にどんな選択肢がありそうですか?
□センターピンは何でしょうか?
□他に優先順位の高い解決策はありませんか?

④W:ウィル
□さまざまな選択肢の中で、何をしますか?
□もっと他に方法はありますか?
□そのやり方で上手くいきそうだと感じますか?
□達成の可能性はどれくらいだと思いますか?

子どもにGROWモデルを使ってみよう

GROWモデルはビジネスシーンに基づいて設計されているので、家庭で使うには固すぎます。なので、子どもに向けた質問に調整したものを以下に用意してみました。

①G:ゴール……目標
□〇〇くん(〇〇ちゃん)は、目標ってあるの?(〇年生の目標は? 〇学期の目標は? など)
□それは具体的にはどういう目標?(「算数のテストでいい点を取りたい」なら「何点を目指したいの?」 など)
□どうしてその目標にしたの?
□その目標が達成できると、どんないいことがある?
□その目標にしようと決めたきっかけは何かあるの?
□そのほかに目指したいことはある?

このようにGROWモデルでは、同じテーマでも、1回聞いただけで終わりません。
「それは具体的にはどういうこと」で、「それをなぜ目指していて」「それを達成するとどんないいことがあるのか」といったように、目標の解像度を上げていくのです。
目標を聞いたとしても、すぐに次のステップである「実行」に話を移してしまいがちですが、目標だけでも聞くべきことがたくさんあります。こうやって、目標だけでも掘り下げていくのです。

②R:リアリティ/リソース……現状/資源
□その目標についてい、いまはどんな状態?
□いまでも上手くいっていることはない?
□それはなぜ上手くいったの?
□他の子で上手くいっている子はいる? その子はどうして上手くいっているんだろう?
□いま上手くいっていないことは?
□どうして上手くいかないんだろう。

リアリティとリソースの質問は、特にリソース(資源)に注目します。
現状で上手くいっていることや、プラスの要素をヒアリングすることで、子どもも「ちょっと工夫したらできるんだ」と自信が持て、取り組む意欲が増していきます。
このあとの③のオプションにもかかわってくるのですが、「どうしたら目標達成できると思う?」という質問は、リソースを探す意味でも重要になってくるので、①のゴール、②のリアリティ・リソース、③のオプションは、行ったり来たりしながら解像度を上げていきます。

③O:オプション……選択肢
□どうしたら目標が達成できそうかな?
□他にはどんなやり方があるだろう?
□たとえばこういうやり方はどうだろう?
□もっといいやり方はあるかな

そうやって①~③を掘り下げていくと、自ずと解決策が見えてくると思います。
これまで子どもに対して、ここまでしつこく目標について聞いたことがあったでしょうか? もしないようでしたらぜひやってみてください。子どもをコーチできている感じがあれば最高です。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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