「自己効力感」という言葉があります。聞いたことがありますか? 課題や状況に対して「自分はうまくやり遂げられる」と思える感覚のことです。同じ能力を持っていても、「自分ならできる」と思っている人と「どうせ無理」という人とでは、行動や結果が大きく変わるんです。
この自己効力感、いまビジネスの組織でとても重視されています。そして、チームのリーダー、管理職には、メンバーの自己効力感を育てることがいま最重視されているんですね。
そして組織の一つの形態である「家族」においても自己効力感はとても大事だと、私は考えています。
自己効力感がそこなわれた家庭では、夫婦の会話が減り、子どもも挑戦することをやめてしまうのです。
なぜ、いま自己効力感が重視されているのでしょうか。また、家庭において自己効力感がどう関係しているのでしょうか。今回は、自己効力感という旬なテーマを切り口に、家族をチームにする方法について考えてみたいと思います。
そもそも自己効力感、具体的にどういうことかわかりますか? 心理学では「セルフエフィカシー(Self-Efficacy)」と呼ばれ、自分がある目標を達成するために必要な能力を備えていると認識する感覚を指しています。言い換えれば、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える心のこと。いわば、自信のようなもののことです。
ちなみに混同されやすいのですが、この自己効力感は自己肯定感とは別物です。自己効力感が「能力」への自信なのに対し、自己肯定感は能力のなさも含めてありのままの自分という「存在」を肯定する心の感覚です。
では、自己効力感の高い低いが、能力そのものにどのような影響をもたらすのか。そのあたりを考えてみましょう。
たとえばプレゼン時、「多少ミスしても乗り切れる」と思っている自己効力感の高い人は、多くの場合、落ち着いて話すことができるでしょう。その一方で「絶対失敗する」と思ってしまう自己効力感が低い人は往々にして、緊張して本来の実力が出せないものです。こうしたメンタルが結果に及ぼす影響というのは、誰しも経験があるのではないでしょうか。
こうした自己効力感によるパフォーマンスへの影響は、プロスポーツの世界ではさらに顕著です。スポーツ選手は自己効力感の高い人が多いものですが、なかでも野球選手の大谷翔平さんは自己効力感が高いことで有名です。
彼は高校時代「高校で160kmを出す」と公言していました。当時高校生で160kmはほぼ前例はありません。かなり無謀と言われた目標でしたが、彼は淡々と達成しました。
プロ入りのとき、高校時代と同様に二刀流へのこだわりを見せた彼に対して多くの関係者が止めました。ですが、「両方できると思っているのでやります」というスタンスを崩しませんでした。結果は、投手としても打者としても大活躍し、球界の歴史を塗り替えるような偉業を成し遂げました。
日本で実績を出したあとMLBに挑むことになった際、「世界最高レベルのMLBで二刀流をやる」と言いました。MLBで二刀流の成功例はほぼありません。現実味のない挑戦だと心配されていましたが、結果は皆さんが知っている通りです。彼はいまも二刀流で活躍し続け、野球史に名を残すような活躍を続けています。
大谷翔平さんの考えは一貫しています。前例がなくても、周囲から批判されても、「できる前提」で意思決定している、ということです。もともと天才的な才能があるにせよ、この強靭な自己効力感を持っていることが、彼のパフォーマンスに劇的な影響を与えているのです。