「家族」というチームのつくり方

「家族から尊敬される夫」がしている3つのコト

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家族の中で、父親の役割って何?

皆さんの家庭では、父親はどんな役割を担っていますか?
昭和の時代であれば「一家の大黒柱」であり、外で稼いでくることが父親の役割のすべてでした。
「亭主元気で留守がいい」というテレビCMが1980年代に流行りましたが、家庭内のことはせずとも、外でしっかり稼いでくるだけの父親が理想だ、ということが皮肉を込めて表現されていました。
昭和の父親には、どちらかというと無口で、細かいことには口を出さず、ただ怒ると怖い、といった印象があったように思います。

ですが、いま現役で父親をしている私自身の姿は、こうした昭和的な父親像とは大きくかけ離れています。
周りを見ても、昭和的な価値観で父親をしている人はいません。
いまや父親の役割はただ稼いでくるだけではなくなり、怒ると怖いというイメージさえ一般的でなくなりました。父親の在り方自体が激変したと言っても過言ではないでしょう。
「パパと娘が仲良し」「家で一番しゃべるのが父親」「夫婦の関係は対等、もしくは妻の方が上」「夫婦のスケジュールはすべて共有」など、昭和のお父さんが聞いたらひっくり返ってしまいそうな父親像のほうが普通になっています。

このように、父親像が大きく変化した中で、父親の役割はどうあるべきなのでしょうか。また子供にとってどういう存在であるべきなのでしょうか。
家庭を持つ男性向けに、現代の父親としてどう振る舞うべきかについて、説明したいと思います。

①リーダーシップを取る

父親の役割を、ビジネスにおけるリーダーのそれに置き換えてみると、やるべきことが見えてきます。

ビジネスのリーダーには、ビジョンを描くこと、部下を巻き込んでいくことが求められます。
組織がどこに向かうのか、その方向性を示し、部下の状況を把握しながら成長を一緒に喜び、足りないところを補って目標達成に向かっていくのです。
そのように大局的な視野を持つ一方で、メンバー一人一人に寄り添い、きめ細かい対応をする必要もあります。褒めるべきところは褒め、叱るべきところは叱り、メンバーが自分で考えて行動できるように、主体性を引き出すアプローチをするのです。
それに加えて、誰でも結果を出せるようにプロセスを設計し、起こった問題を解決しながら、乗り越えていく。細かなトラブルの対処の仕方がまずいと、職場での不満が増えたり、離職が増えたり、目標達成ができなくなったりしてしまいます。

このように、ビジネスにおけるリーダーの役割は多岐にわたり、非常に大変なものです。
ですがそれに照らし合わせてみると、現代の父親の役割がおのずと見えてきます。

まず第一に、父親である自分が家族というチームのリーダーである、という認識を持つことが大事です。
そもそも、人が集まってできた「組織」というのは、リーダーが必要です。組織がどこに向かうのか、進むべき道を指し示す役割が必要なのです。これは組織の一つである、家族も同様です。
もちろん、母親のほうがリーダーシップが強いというケースもあるでしょう。その場合、奥さんの提示するビジョンが実現するように、共感を示したり、修正を加えたりするのが父親の役割になりますが、父親にリーダー的な視野を持つことが必要なのは言うまでもありません。

話は少し変わりますが、リーダーらしさにはいろんなタイプがあります。
リーダーシップで有名なH理論というのがあり、それを基にしたモデルによると、リーダーシップのスタイルは五つがあるととらえることができます。

1.独裁型
2.父権型
3.対話型
4.民主型
5.放任型

独裁型というのは、リーダーが自分で決めて自分の思い通りに言うことを聞かせるスタイルです。
父権型とは、相手の意見は聞くものの、決めるのは自分、というスタイル。
対話型は、相手との立場が対等になって、対話をしながら決めていくスタイル。
民主型は、自分の意見はみんなの中の一意見としてとらえて、みんなで決めたことを重視するスタイルです。
最後の放任型は、非常に誤解を生みやすい表現になっているのですが、何もせずに放置するのではなく、相手に考えさせ、相手に決めさせ、しかしうまくいったら手柄はみんなのもの、うまくいかなかったら責任を取る、といった、相手の主体性を引き出しながら結果も出していく、非常に高度なリーダーシップスタイルです。

これら五つのリーダーシップスタイルの中で、独裁型、父権型のリーダーシップは、現代の家族においてはあまり好まれていないスタイルと言えます。
対話型、民主型、放任型を行ったり来たりする中で、父親、母親、子ども、一人一人が自分で考え、行動しながら、達成感と悩みを共有し、一緒に人生を歩むようなリーダーシップが求められているのです。

皆さんの家庭では、どのリーダーシップスタイルを取っているでしょうか?
そもそもの話ですが、リーダーであるという自覚がない父親が多くなっているのではないでしょうか。
ビジネスにおいては、目標を定めて取り組んでいる人が多い人でも、家庭の中で、方向性を示したり、目標を掲げるということができていない家庭が多いのが現状です。

私自身も、仕事が忙しくなって時間的な余裕がなくなってくると、ビジョンを提示したり、ワクワクする未来を語ることよりも、「次の休みは何をしよう」と場当たり的に家族との時間の過ごし方を決めたり、「家事の分担をどっちがするのか」という目の前の役割の割り振りに終始してしまいがちです。

リーダーとして、組織のビジョンを示すという役割意識があるかどうか。
そのうえで、どのようなリーダーシップスタイルで家族と関わるかを考えることが重要なのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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