東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

開幕投手奥川がようやく掴んだ今季初勝利――
チームの苦況に変わりはないが、「まだまったく諦めていない」

リーグ2制覇達成から、2年連続5位に沈んだ東京ヤクルトスワローズ。怪我人は絶えず、投打ともに大不調にあえぎ、指揮官髙津監督も大いに苦しむこととなった。
今シーズン「捲土重来」というスローガンを掲げた髙津監督は、どんなビジョンでチーム再建を図るのか。本連載では、今年もインタビュアーに長谷川晶一氏を迎え、復活にかける髙津監督のマネジメント術をお届けしていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

――前半戦が終了し、明日からは後半戦が始まります。前半戦終盤では、今季初の4連勝もありました。7月19日からの広島東洋カープ3連戦では、今季初となる3タテをくらわせました。まずは、19日の奥川恭伸投手の今季初勝利について伺いたいと思います。

髙津 キャンプのときから、ヤス(奥川)にはきちんと準備をしてもらって、しっかりローテーションに入ってもらおうと考えていました。以前、この連載でもお話したようにチームのこと、本人のことを思って開幕投手に指名しましたけど、それがよかったのか、悪かったのかは今はまだわからないです。でも、辛い時間を長く過ごしたことによって、野球に対する思いであったり、うまくいかないときの悔しさであったり、いろんな感情がおそらくあったと思うんです。こうして一つ勝つことの難しさ、一つ勝つことの嬉しさを経験したということは、彼にとって非常に大きな1試合だったんじゃないかなと、勝手にそんなふうには思っていますけどね。

――結果的に4月、5月、6月とずっと勝ち星がない中で、9試合目の登板で今季初勝利。ファーム落ちも経験しました。この間、監督の中での奥川選手に対する思い、信頼みたいなものに変化はありましたか?

髙津 信頼度については、特に変化があったわけではありません。ただ、ファームを経験させたことなど、彼には辛い時間をこちらから与えてしまった部分もあったし、本人もなかなか勝てずに苦しんだ部分もあったと思います。もちろん、「早く勝ってほしい」とは思っていたけど、ヤスに限らず、若い選手たちについては、今日の試合だけではなく、これから先のことをずっと考えていかなきゃいけない。例えば、今日投げるとしたら今日の試合をどうやっていくか、今日の試合が終われば次の試合、今年1年が終われば来年というふうに野球人生は続いていく。そういう意味では、この間のヤスの取り組みは、必ず次の試合に、来年のために、いい時間になってくれると僕は信じていました。

――ファームに行く前と比べて、下で練習を積んだことによって明らかに復調して一軍に戻ってきたような印象があります。この間にいい調整ができたのでしょうか?

髙津 もちろん、ピッチングコーチとともに、いろいろな課題に取り組んで、それを克服していったのは事実ですけど、それ以上に心の部分のケアが大きかったと思います。以前の吉村(貢司郎)のときもそうでしたけど、一度、ファーム落ちを経験することによって冷静に自分を見つめ直してほしかった。技術的なことももちろん大切だけど、心の部分のケアもすごく大切で、それができたのがファームで過ごした時間だった。今の自分には何が足りないのか、何をすればいいのかを冷静に見つめ直すには、とてもいい時間だったんじゃないかな。僕は「無駄なんてない」と思っているし、「常にいい方向に向かっている」と思って、その都度判断しています。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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