帝国データバンクの調査によれば、正社員不足を感じる企業は過去最高の57.2%。その中で介護離職が進めば、採用コストの上昇とともに現場の負担も増大する。
「“介護支援は福利厚生”という認識は時代遅れです。もはや“人材確保戦略”の一環。介護対応の柔軟性がある企業ほど、社員のエンゲージメントが高く、採用・定着率も上がる傾向があります」(同)
では企業は、どうすれば介護離職を防げるのか。ポイントは「制度の可視化」と「先回り支援」の2つだ。
1.社内での情報共有と相談ルートの整備
介護は突然始まる。親の入院、要介護認定などで、数週間で生活が激変する。そのため、社内イントラネットや人事面談で制度を“見える化”することが第一歩。また、直属の上司が制度を知らないと、相談すらできない。管理職研修で最低限の知識を持たせる必要がある。
2.仕事の“再設計”を前提にする
「長期休む=仕事が止まる」ではなく、タスクの分散・チーム体制化を平時から設計する。介護休業中の代替人材を社内で確保できるよう、リスキリングやジョブシェアも有効だ。
3.柔軟な勤務制度を導入する
在宅勤務・時差出勤・短時間正社員などを組み合わせることで、介護と両立しながらキャリアを継続できる。特に、ICT化でリモート管理が容易になった今、「勤務形態の柔軟化」こそ最大の防止策となる。
すでに多くの大手企業が「介護離職ゼロ」に向けた取り組みを進めている。
トヨタ自動車:家族介護の段階に応じて、休業・時短・在宅を組み合わせた「フェーズ型支援」を導入。
NTTグループ:社員が介護状態を匿名相談できる「ケア・コンシェルジュ」制度を導入。
花王:介護経験社員が相談員として支援する「ピアサポート制度」を設置。
これらの企業に共通するのは、“法定以上の制度整備”と“早期の情報共有”だ。田島氏はこう強調する。
「介護は“突然始まり、終わりが見えない”という特徴があります。だからこそ、企業が早い段階でサポートに入る仕組みを作っておくことが、結果的に人材を守り、企業の競争力にもつながるのです」
2025年には団塊世代がすべて75歳以上となる。つまり、社員の3人に1人が親の介護リスクを抱える時代が到来している。介護はもはや特別な事情ではなく、「全員に訪れるライフイベント」だ。
「企業にとって“介護離職を出さない”ことは、これからの人的資本経営のベースラインです。制度を知らなかった、伝えていなかった――それはもう言い訳になりません」
・介護休業は「法律で定められた権利」であり、勤務先の制度に関係なく取得可能。
・2025年法改正で、企業に説明・支援の義務化が進行。無知はリスクになる。
・介護離職を防ぐことは“人材戦略”。柔軟な勤務制度と早期のサポート体制づくりがカギ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=松田美里/人事労務コンサルタント)